第九章
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
と多いわねー。…不可能じゃない?」
柚木が実もフタもないことを言うと、紺野さんが崩れ落ちた。
「くっそう…どうすれば…」
「と、とりあえず優先順位をつけようよ!…その1!行方不明の患者の安否をつきとめる。その2!プログラムのデバッグ終了アンド配信。その3!紺野さんの冤罪晴らし」
「俺の順位低いな…」
「最悪、裁判で晴らしてよ。時間はたっぷりあるだろう」
「そうよ。チャンスは3回もあるんだし」
「できれば裁判の前に晴らしたいんだが…」
紺野さんががっくり肩を落とした。なんだかんだで、この順位付けに納得したらしい。
「じゃ、まずあいつの捜索だな」
もう一度懐から煙草をつかみ出して火をつけると、暗い目で紫煙を吐き出した。なんとなく鬼塚先輩を思わせる仕草だ。
「ビアンキちゃんを起こしてくれ」
「うん。…ビアンキー、起きて」
スリープモードに入ってたビアンキは、僕の呼びかけを待ちかねたように頭を上げた。
「ご主人さま!開けなかったです!」
「…なにを?」
またスリープ中、なにか変なことをしてたらしい。
「これからも、開けないですから!」
「うん、ありがとね。その調子で頼むよ」
早々に話を切り上げると、脇から顔を出してきた紺野さんに場所を譲る。
「お、すまんな…昨日、ビアンキちゃんを襲ったMOGMOGのこと、話せるかい」
紺野さんは微妙に居住まいを正して身を乗り出した。
「…覚えてるだけでいいなら」
「OKだ。まず、ビアンキちゃんの印象でいいんだけど、そのMOGMOGがビアンキちゃんに執着した理由、何でだと思った?」
「多分、だけど、私とあの子が『同じもの』だったから…だと思うんです」
「たとえば、ハルもその『同じもの』に入るかい」
「入ると思うです。だって、ハルも私とお話できるから」
「そうか…じゃ、やっぱりダメだな。もしもビアンキちゃんを狙ってるだけなら、ハルが代わりに追跡すればいいと思ったんだが…」
「あのさ、ビアンキたちは『同じもの』と『違うもの』を、どこで見分けるの」
ビアンキは少し考え込むような仕草をして、2〜3秒黙り込んでしまった。
「なんとなく、としか…」
「商品コードです」
紺野さんのポケットから、無機質な声が響いた。チカチカと青白い明かりが洩れている。
「…ハル!?」ビアンキが目を見張った。
「ビアンキ。あなたは情報整理が下手すぎる」
紺野さんがストラップをひっぱると、点滅する携帯電話がずるりと現れた。
「すげぇだろ。携帯に出張できるように改造したんだ」
「もしかしてこれ、着信とは違うの?」
「厳密には違うんだよ。パソコンを起動してないときは携帯に常駐してるんだ。俺のハルは、ただのセキュリティソフトじゃないからな」
得意げな紺野さんにはほぼ感心を示さず、ハルは淡々と話を続け
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ