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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
第十五話
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取り繕う。

「セッツ殿、この度は真に申し訳ありません。此方の連絡が届かず、姫様配下の騎士団が初陣であり、貴方方を敵だと認識してしまい迷惑をかけてしまいました」

 ハミルトンはそう言って頭を下げた。

「大丈夫ですよハミルトンさん。誤解だと分かれば、それに伊丹隊長も許していると思いますよ」

 樹はそう言う。

「……貴方方の御厚意は本当に我が帝国では信じられないです」

 ハミルトンは染々と言った。

「まぁうちの国はお人好しというかなんというかですね。義を尊重するというかなんと言うか……」

 樹は苦笑しながらそう言う。それから二人は樹を心配するヒルダとロゥリィが部屋に入るまで談笑するのであった。

「……心配して損したな」

「そうねぇ」

 部屋に入ってきたヒルダとロゥリィはそう言ってジト目で樹を見る。

「……心配かけて済まん……」

 流石に樹は申し訳なく思い、二人に頭を下げる。そんな樹に二人は苦笑する。

「無事ならそれでいいわぁ」

「うむ」

 二人は頷くが、ハミルトンはヒルダを見て驚いていた。

「貴女はヒルデガルド皇女ではありませんかッ!? 何故此処に……」

「貴様は私を知っているみたいだな」

「は、はい。一度姫様と面会した事がありますので」

「そうか。それで此処にいる理由だが、今は亡き部下達に助けられてな。今はアルヌスでイツキ達といる」

「……国には戻られないのですか?」

 ハミルトンはそうヒルダに聞いた。ヒルダの国であるグリュース王国は、皇族がいないという理由で帝国が保護領としているのだ。

「戻らん。戻ったところで私に何が出来るというのだ? 前々から帝国の権威はグリュース王国にも及んで内政にも口を出していたではないか。商いも帝国の商人達が商業を押さえようとしている」

「そ、それは……」

 ヒルダの言葉にハミルトンは何も言えなかった。

「グリュース王国は帝国と戦う前から負けていたのだ。それに私は民が無闇に傷つくのは嫌だ。それならいっそ帝国に服従した方がいい」

 ヒルダはそう言った。グリュース王国と帝国の軍事力は帝国が数倍勝っていたのだろう。

 ヒルダの父なら戦わずして破れるより戦って破れるのが良かったかもしれないが、既に王は亡く、ヒルダは大日本帝国へと身を寄せている。

 諸国の力をもぎ取ろうとしていたモルト皇帝の思わない戦果であろう。

「民が幸せに暮らせるなら私は卑怯者と呼ばれても構わない。民の上に立つ者は相応の覚悟が必要だ」

 ヒルダはそう言って自国の事は気にしてないように思われる。しかし、樹やハミルトン達はヒルダの右手が強く握り締められ、血がポタポタと流れているのを見た。


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