第百六十六話 荒ぶる剣
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第百六十六話 荒ぶる剣
「アーチボルトも死んだ」
「うむ」
ラミアはアクセルの言葉に頷いていた。今彼等はキールの酒場にいる。そこで飲みながら話をしているのであった。
「あの男は好きではなかった」
「そうだったのか」
「邪なものを感じていた」
こう述べるエリスだった。
「まるで破壊や殺戮を楽しむような」
「そうだな。あの男はその為に戦っていた」
それはアクセルも見抜いていることだった。
「己の欲望の為にな」
「あれもまた人間なのか」
ラミアはアーチボルトを見ての言葉を出した。
「あれもまた」
「そうだ」
そしてアクセルもそれを否定しなかった。
「あの男も人間だった。それは紛れもない事実だ」
「そうか」
「しかしだ」
だがここで。アクセルはこうも言うのだった。
「ゼンガー=ゾンボルトもまた人間だ」
「少佐もまた」
「あの男はどう思う」
アクセルはラミアに対して問うた。
「あの男は。どうなのだ」
「素晴らしい方だ」
彼について思っていることをそのまま述べたラミアだった。
「その心、確かに見た」
「それが答えなのだろうな」
「答えか、少佐が」
「そしてアーチボルトもだ」
彼等双方が答えだというのである。
「答えなのだ」180
「両者がなのか」
「アーチボルトは下劣な男だった」
アクセルははっきりと言い切った。
「表面は慇懃だったがな」
「それはその下劣さを隠す為のものだったのだな」
「醜い男だった」
こうも言うアクセルだった。
「そしてその醜さが一つの答えだ」
「そして少佐は」
「あのままだ」
アクセルは今度は多くを語らなかった。
「あのまま見ればわかるな」
「うむ、高潔な人だ」
「そして美しいな」
「確かに」
「それもまた答えなのだ」
アクセルはグラスを置いて語っていた。
「人間というものはだ」
「醜くもありそして美しい」
ラミアは言った。
「それがか」
「どちらも答えだ。間違いではない」
「そういうものなのか」
「アーチボルトの様な奴もいればゼンガーの様な者もいる」
「それが人間なのだな」
「そうだ。そしてだ」
さらに言うアクセルだった。
「それは誰の中にもあるものだ」
「誰の中にも!?」
「当然御前の中にもある」
ラミアを見て告げたのであった。
「俺の中にもだ」
「私の中にもそれが」
「御前は人間だ」
アクセルは言った。
「そして俺もだ」
「そう言ってくれるのね」
「事実を言っただけだ」
こう言えるようになったアクセルだった。
「だからだ。御前の中にも俺の中にもあるのだ」
「そうなるのね」
「アーチボルトにもなれれば少佐にもなれる」
「どちらにもなのね」
「そうだ、どちらにも
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