アインクラッド編
回想――別れ
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はずのキリトが部屋にいないことにサチは気づいた。
嫌な予感がする。全身の毛が泡立つ。
「どうしたの・・・・?」
「キリト・・・・メッセージ送っても返ってこないし・・・・フレンド追跡しても所在が分からないんだ」
「そんな・・・・」
「サチは昨日何か聞いてない?」
首を横に振る。
昨日はヘトヘトでろくに会話もせずに寝たのだ。
話すどころか、おやすみ、の一言すら言った記憶がない。
「やっぱり、キリト・・・・昨日のこと気にしてるのかな・・・・」
「・・・・多分、そうだと思う」
と言うより、それしか考えられない。
サチの脳裏には、怒り、涙を目に浮かべ、自分を責め立てたキリトの顔が浮かぶ。
違うのだ。あれはキリトが悪いことではない。
悪いのは、自分たちだ。
キリトが気に病む必要など、ありはしないというのに・・・・・
「取り敢えず、僕たちは最前線の街の方に向かうから、用意ができたらサチも来て」
「分かった」
ケイタが部屋から出た後、サチはすぐさま追いかけるべく、着替えようと思った。
ウインドウを開く。
そして、それに気づいた。
「これ・・・・」
キリトとサチの間で作った、二人だけのアイテム共通タブ。
そこに見知らぬアイテムがあった。
「記録結晶・・・・?」
呟きながら、オブジェクト化。そして、軽くタッチすると、ふわり、と浮かび上がったそれからキリトの声が聞こえた。
おはよう、サチ
よく眠れた?
・・・・って、わたしが聞くのは変かな・・・・
勝手に部屋を抜け出して、行方を眩まして、ゴメン
みんなに心配をかけるって分かってたけど、面と向かって言える勇気が無かった
だから、これに録音することにした
サチがこれをケイタ達に聞かせるかは任せるよ
わたしは《月夜の黒猫団》のみんなに仲間に誘われて、ギルドに入らないかって言われて、嬉しかった
〈ビーター〉であるわたしを受け入れてくれて、嬉しかった
一人で宿屋で食事をしている時より、サチの手料理をみんなで笑いながら食べている時のほうが楽しかった
みんなに、サチに頼ってもらえて、初めてレベリングばかりしてきた自分が誇らしかった
初めて出会った時、守れてよかったって思えた
前線じゃ女性プレイヤーであることを隠して生活しているから、サチみたいな女性プレイヤーと話したりすることもなくて・・・・
こっちの世界で初めて攻略を抜きにした友達が出来て
一緒に話して、ご飯食べて、狩りに出て
きっと前線にいないプレイヤーにとっては当たり前のことなんだろうけど、そんな当たり前の生活が本当に、楽しかった
でも・・・・いや、だからこそ、ごめん
わたしは一緒にはいられない
サチ達と一緒にいたら、わたし
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