アインクラッド編
回想――別れ
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部屋がある。
キリトはその2階の部屋の1つ、サチの部屋に泊まっていた。
すでにサチは就寝しており、明かりは消してある。
薄暗い月光の光がサチの顔を照らす。
すうすう、と規則正しく小さな寝息を立てながら寝ているサチの顔を見る。
横で寝ているサチは極限まで死に近かった戦闘のせいで疲労が貯まったせいだろう。
いつもより深い眠りに落ちたようで、キリトが髪の毛を撫でる程度では起きそうにない。
「おやすみ・・・・サチ」
キリトは伝わってないと知りながらも言葉を口にして、ベットを抜け出し、そっと部屋の扉を開けた。
「ごめん・・・・」
ポツリと洩らした謝罪の言葉だけが部屋に残された。
足音を殺しながら〈月夜の黒猫団〉のギルドホームを抜け出したキリトは外からその新居を見上げた。
木造建築然とした建物は彼らのアットホームさを反映したかのように、居心地のよさそうな雰囲気を醸し出している。
今しがた部屋を抜け出してきたキリトにもう一度足を引き留めるほどの引力を持ち合わせている。
2階建てのホームは5人用としてはかなり大きいだろう。
ケチくさいギルドなら10人くらいで住むかもしれない。
いや・・・・現に1つ部屋が余っているのだ。
個人用の部屋は6部屋。総ギルドメンバー数より1つ多い。
それが誰のために残されている物か・・・・・・キリトは、思い上がりではなく、確信で分かっていた。
それでも、その部屋を使おうとせず、サチの部屋に泊まった。
キリトはもしかしたらこれが最後かな、なんて思いながら踵を返した。
転移門まで1人で歩く。
既に現実世界では夏前だ。夜遅くでも寒くはない。暑い、の方が適切だろう。
しかし、なぜか体を通り過ぎていった風を寒くキリトは感じていた。
転移門に辿り着き、
「ゴメン・・・・サチ・・・・」
もう一度、そう呟いたキリトは最前線第24層の主街区の名を告げた。
次の日。
アラームをかけ忘れていたサチは、部屋をノックされ、声を掛けられたことにより目を覚ました。
「サチー。起きてるか?」
声の主はケイタ。
慌ててベッドから跳ね起きて、意識を覚醒させた。
「う、うん! 入っても大丈夫だよ」
がちゃり、と音を立ててケイタが部屋に入ってきた。
パジャマ姿のままであるが、ギルドメンバーなら気にする必要もない。
宿代をけちっていた時などは、同じ部屋に全員で寝たこともあるのだ。
「どうしたの?」
心地よく寝ていたサチは明るめの口調で訊ねた。
すると、対照的にケイタは少し表情が暗い。
「サチ・・・・キリトがどこにいるか分かる?」
「えっ・・・・と・・・・」
そこで、ようやく昨日の夜同じベッドに入っていた
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