SAO編−白百合の刃−
SAO31-スズナの涙
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大型の黒い馬、フェイタル・ガイダンスが去った後、私達は安全エリアに足を踏み入れた。絶望的な危機から回避したとはいえ、私とドウセツは転移結晶で『はじまりの街』へ脱出するわけにはいかなかった。
シンカーさんが今どうなっているのかはわからない。兄達が救出に成功しているかもしれない。そうなっていることを今は祈ろう。
そして私達はこれからスズナと話をしなければならない。おそらく今後のこと、私達にとって一度しかない家族会議を、地下ダンジョンの安全エリアで話し合いを始めよう。
「スズナは、思い出したって言うことは……」
「はい、戻りました。ユイのことも、全部、偽りなく…………蘇りました」
「……そっか」
どうして急に記憶が戻ったかわからない。ただ、スズナが思い出したと言った。その思い出した方が大切なんだ。
「スズナは何を思い出したの?」
ドウセツは訊ねるとスズナは小さく頷き、話し始めた。
「はい、説明します。キリカ様、ドウセツ様」
スズナから言われたこともない呼び方をされる。称が違うってことは記憶が戻った証拠だと言うことかもしれない。だって私達は本当の家族ではない。当然のことだ。
そう思いながら、私はスズナが思い出したことを話してくれた。
「『ソードアート・オンライン』と言う名のこの世界は、ひとつの巨大なシステムによって制御されています。システムの名は『カーディナル』それがこの世界、ソードアート・オンラインのバランスを自らの判断に基づいて制御しています。カーディナルは元々、人間のメンテナンスを必要しない存在でありました。それは二つのコアプログラムが相互にエラー訂正を行い、更に無数の下位プログラム群のよって、世界の全てを調整する。モンスターやNPCのAI、アイテムや通貨の出現バランス、それら全てをカーディナル指揮の下、プログラム群に操作されています。しかし、ひとつだけカーディナルでは解決できないものがありました」
「解決できないこと?」
スズナの話によれば、人いらずの一つのシステムによってあらゆるものを操作、制御できていたという話だ。
システムではなく人の手を使わないとできないこと……機械では絶対に人に理解できないこと、それは……。
「人の精神です」
その一つが、スズナが言ったことだった。
「確かにシステムで解決できるほど簡単なものじゃないわね」
「はい、ドウセツ様の言う通りです。いえ……その予定でしたというのが正しいですね」
予定でした?
……薄々気がついていた。
それを言わなかったのは心から信じたくないと思っていたからである。ドウセツは私よりも早く気がついていたはずだ。それを言わなかったのは……おそらく私と同じ気持ちでいたと思う。
だってまさか……。
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