Mission 1 精神が……?
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Side --- <ゼロ>
「はいじゃあ、次の人自己紹介お願いします」
おっとりとした感じの教師が俺の方を見てそう促してくる。
自己紹介という物がどんなものかは知らなかったが大体は理解した。
つまり、自分の名前、特技などをここに居る人に教えるだけ、という限りなく簡単な事だ。
俺が失敗するわけがない。名前は適当に考えればいいだろう。
前までにならって教壇と呼ばれる少し高くなっている足場に上る。
「ゼロ・アンリエットだ。出身は気にしないでくれれば嬉しい。特技は……剣術だ」
これで、完璧だろう。
チラリと横の教師を見ると首をかしげている。
まだ何か言う事があったか?……あぁ、何か特筆すべき点と最後の一言を添えなければいけないのか。
「見ての通り男だが仲良くしてくれると嬉しい。以上だ。よろしく頼む」
きちりと頭を下げる。礼という重要なコミュニケーション行動らしい。
一瞬の静寂の後に部屋のあちこちから甲高い声が上がる。
うまくできたようだな。自己評価Aとしておこうか。
「はい、みなさ〜ん、しずかにしてくださ〜い」
おっとりした教師(ヤマダといったか?)が懸命に騒ぎを鎮めようとしているが鎮まる気配など見えない。
だが、ガラッと扉があけ放たれ中に凛とした佇まいで一人の女が入ってくるとその騒ぎはいったん収まる。
「静かにできないのかお前らは」
女がそう口にすると先ほどのような静寂ののちまた、喧騒に包まれる。
部屋中の女が教卓前に集まってくる。
正直うるさい。人間とはここまでうるさいものなのか?
「きゃー! 千冬様よー!!」
「本物の千冬さんだー!」
「やっぱり美しいわー!!」
チフユと呼ばれた女が眉間にしわを寄せぴくぴくと動かしている。
ヤマダは教壇からはじき出され床に座り込み隅の方で泣きべそをかいていた。
喧騒は収まりそうにないし、ヤマダの姿が感情でいうならかわいそうだったので慰めに行く。
「大丈夫か? 手を貸そうか?」
「アンリエット君……だ、大丈夫ですよー。先生なんですからそれに大人ですから」
「そうかならいいんだが。そうだ、これでも使ってそれを拭いておけ。大人ならみっともないんだろ?」
今着ている制服という物のポケットに入っていたハンカチと呼ばれる布を手渡す。
確か濡れた物を拭くのに適したものだという情報をどこかで見た覚えがある。
ヤマダは感激した様子でそれを受け取ると目元に持っていき涙を拭きとる。
「あはは、先生がこんなんじゃ生徒に示しが付きませんね?ありがとうございますアンリエット君」
「いや、礼には及ばない」
「気持ちの問題ですよ。何もできませんからせめてお礼くらいはきちんと言っておかないと」
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