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茨の王冠を抱く偽りの王
19.優しい王
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「えっ!?......ウソ.....でしょ」

アルゴの言葉を聞かずとも察してしまう。

「ごめんなさい。私を護って」

「そ、そんな.....」

大雲が死んだ......ウソでしょ!?

泣き出すツグミをこちらに寄せる。

「クモっち......」




「どうぞ」

桜満博士にコーヒーを渡す。桜満博士がトランクを開け、その中身を見ている。

「ありがとう」

「それを使えばガイと戦えますか?」

トランクの中身は"ヴォイドゲノム".......シュウが手にいれてしまった罪の力.....人の心を形に紡ぐ力....."王の能力"

「少なくとも同じ力は手にはいるわ。でも、全身の遺伝子から夥しい拒絶反応が起こる可能性があるわ」

そんな力をシュウは......

「酷い人間よね。シュウには使わせたくないくせに......誰かには使って欲しいと思っているのよね」

「少しだけわかります。あたしもシュウが力のせいで苦しむの見てきましたから」

「それだけじゃないわ。もし、もう一度使えば......おそらくあの子は死ぬわ」

シュウが死ぬ!?

「それだけ危険なものなの」

桜満博士はトランクを閉める。

「大丈夫です。私たちにはもう一人.......苦しいはずなのに、苦しむ顔も見せず笑顔のあいつがいますから」

絶対にあいつは生きてる.......私に勇気をくれたあいつなら.....

ドォォオン!!

外で爆発音が鳴り響く。




「遅かったみたいね」

車の外に広がる風景は火の海。
綾瀬......みんな。

俺は車の扉を開け、疾走する車から飛び降りる。集も車から飛び降りている。

「待ちなさい!!桜満集!!茨壊!!」

「行くぞ、集!!!」

「うん!!!」

火の海と化す建物に向かい俺と集は走り出す。

待ってろよ、綾瀬、みんな!!!




砲撃が続く火の海の中、私たちは逃げる。

「お.....い....てっけ....」

魂館くんが寒川くんの背中で途切れ途切れの声で言う。

「黙ってろ。俺はもう、誰も見捨てたくはない」

「八尋」

銃撃が止むことはない。

「ダメ、誰とも連絡が取れない」

ツグミが通信を取ろうとするが取れないようだ。

「戻るしかねぇ」

「でも、戻ったら挟み撃ちに会うよ!」

「ならどうしろっていうだよ!!!」

アルゴが声をあげる。

この状況を打開する方法は.......私の膝の上にあるこのトランクの中にある。

「.......すまない」

「桜満博士、私に"ヴォイドゲノム"を使ってください」

その場にいる
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