十一話 「『二人の』為」
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にいる青年はアズマよりも酷く必死で頭を抑え眠気を抑えようとしている。
「吐けお前ら! 今すぐに!!」
睡眠薬。その言葉が脳裏に浮かび確信する。だがもう一つの要因が、自分たちと他四人の症状の差がわからない。
一体何が原因なのか、咄嗟に思いつかない。
「大丈夫ですか!?」
焦ったような声が届く。ここの二人と四人、それに入っていない一人である料理番の若年男だ。どうやら彼は大丈夫らしくアズマたちの方へ向かってくる。
何が、どうして。疑問が脳裏に絶えず浮かびながら手を借りようと若年男を――
「っ止まれ!!!」
気力を振り絞ったアズマの声に向かってきていた足が止まる。
「どうしたんですかアズマさん。二人共辛そうだしボクが――」
「あっちの四人の方がよっぽど辛そうだぞテメェ。眼付いてんのかおい」
「あ、の……アズマ…さん、一体……」
「お前は少し黙ってろ」
今にも倒れそうな青年の言葉を殴って黙らせアズマは荒れた口調で相手を睨む。殴られた青年はアズマの目論見通りその衝撃に嘔吐し胃の中身を吐き出す。
眠気を気力と痛みで弾きながら出された疑問が若年男へと向かう。
「そういやよ、何で今日はお前が火の管理してた。飯の用意とかはいつもこっちのバカの仕事だったはずだろうが」
「何を言い出すんですか急に。ただ待っている時間が長くて腹すいたからボクが」
「その割には全然食ってなかったよな。いや、今思えばお前何も食ってないんじゃないか」
串焼きとカップの飲み物。若年男はアズマの見た限り何一つ口へ運んではいない。
症状の差だってそうだ。青年とアズマは前者は食べず、後者だけ。そう考えれば説明がつく。
「ボクを疑って――」
「いや、それは別にいい。白、だったか。お前が攫った少女の名を知っていたことも、まあいい」
“運動”の時に聞いたなどいくらでも考えられる。だからそれは別に問題じゃない。確信を持ったのはそこじゃない。
問題なのは――
「お前、さっきなんて言った?」
目の前のこいつが、本物のクズのはずだということ。
言うはずが無い言葉を言ったことだ。
「お前確か『元々ヤル気で攫った。返すつもりはない』って言ってたらしいじゃねぇか。けどさっき何て言ったクズペド野郎。“どうして”『もう出来無い』んだったけか?」
「……ああ、なるほど。にしてもそれは酷い」
焦った表情から一転、まるで間違いを反省する子供のようにつまらさそうな顔になった若年男が“どちらの”意味にもとれる言葉を呟く。容姿と背丈はそのままに、雰囲気がガラッと変わる。
それでアズマは確信する。闇に紛れ動かした手で腰の裏にあるものを掴みながら機を狙う。
まるで別人みたいに
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