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弱者の足掻き
十一話 「『二人の』為」
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らもう出来ないのが悲しいなぁ。白を動けないように覆いかぶさって背徳感ヤバくてボクもう何度も」
「あー、いいいい。聞きたくないから」

 興奮しているのかいつもと違いやたら雄弁に喋ってくる相手に消えろ消えろと軽く手を振り追い払う。
 野郎の情事の話など聞いても面白くもなんともない。アズマからしても子供になどそういった興味もなく、街で金で女を買ったほうがマシだと思っている。だから理解できないが、まあ世の中そういった需要があることも知っているから否定する気も起きないのだが。



 暫くしてふと風に当たりたくなったアズマは仲間から少し離れ近くの木の根元に腰を下ろす。

「アズマさん飲みますか? 入れてもらいました」

 そっと湯気の立つカップが目の前に出される。どうやら抜け出してきたらしく、帰り道にはなかった痣を顔に作った青年からそれをアズマは受け取る。
 熱い熱が指を温める。火の番をしていたあいつに入れてもらったのだというそれは簡単なスープのようだ。大方粉物を溶かしたが適当な食材を茹でた汁だろう。暖まれば十分だ。

「その痣どうした」
「帰り遅いってちょっと殴られました。顔はやめて欲しいんですが気が立ってるんでしょうね。買ってきた干し肉ちょっと齧っただけでロクに食べられてもません。このカップは今日の料理番が特別にってくれました」
「文句言わないのか?」
「オレが言うと思います? どんな性格か知ってるでしょアズマさんは。少しすればなおりますよ」

 理不尽だが言えば相手はさらに苛立つだろう。そういった事を荒立てないのが青年の甘さであり利点でもある。上手く立ち回るには、はぶれずにいるには十分だし下にでるその態度を好く者もいるだろう。アズマからしたら良いとは思えないが、青年の生き方だ。

 言葉を返す代わりにカップを傾け中身を喉に流す。暖かさが身にしみ、口から出される息が少しの間白いモヤになって空をたゆらう。
 すぐ近くに座った青年がポツリと言う。

「皆に聞いてみたらあの二人放置しようって言ってました」
「掃除するの面倒だからだろ。いいんじゃないか。好きにしろ」
「あざっす。……甘いのが抜けきれないんですよね。いや違うな、臆病なんですね。覚悟がないんでしょうね」
「だろうな。もっと覚悟を……いや、お前の場合は経験だろうな」

 青年の甘さは確固たる意志がない弱さからくるものだ。何かをしようとする際自分の意見で正しいのか確信が薄い。何か大きな事でもあり確固たる何かを感じ取れるようなことでもあればそれは変わるだろう。誰かの庇護化でなく、自分で動けば。
 だが現実、そんな事は望めないだろう。
 自分の芯をどこに置くかさえ迷っているような状態では到底無理だ。

「割り切ったほうが楽だ。何なら四六時中腹に刃物
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