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渦巻く滄海 紅き空 【上】
四十四 愚者か賢者か
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カカシ。本選の目玉である少年は、今ようやく舞台上に降り立った。












「なぜワシがお前のようなよそ者の頼みを聞かねばならん?」
一蹴する。先刻の機密事項を再び蒸し返した子どもを聊かうんざりした面持ちで老人は見た。
一方、よそ者と言われ、ナルトは一瞬憂え顔を浮かべる。そしてすぐさま冷然と微笑んでみせた。

「頼んでいるんじゃない。これは取り引きだ」

殊更強く宣告する。ふてぶてしくそう告げてきたナルトの顔をダンゾウの部下達はまるで愚者でも見るかのような呆れ返った風情で眺めていた。
主がなぜこんなガキに好き勝手言わせているのか、その理由がわからない。いっそ口を閉ざしてやろうかとクナイに手を掛けた配下の一人をダンゾウは「待て」と手で制した。
覚束ない動作で近場の岩に腰を下ろす。手を組んだまま杖に寄り掛かり、彼はくいっと顎で話の続きを促した。


ダンゾウに話を聞く態勢へ持ち込ませる。ようやく真摯な眼で自分を見出した彼に、ナルトはまず手札の一枚を切った。

「『サスケに手を出すな』」

微かに反応したダンゾウに気づかぬふりをしてナルトは言葉を続ける。まるでイタチ本人が目前にいるかのような既視感に襲われ、ダンゾウはついと片眉を上げた。
「そう言われただろう。うちはイタチに」
静寂が落ちる。風に吹かれた木の葉が数枚、双方の間へ緩やかに舞い降りてきた。目の前で踊る葉の軌跡を眺めていたナルトが顔を上げる。険しい顔つきで此方を睨むダンゾウに、彼は目を細めた。

「その条件、破ってもいいのか?」
「…何の話だ?」
「『根』に監視させていただろう」
「ダンゾウ様は、うちはサスケの安否を気遣っておられただけだ!ふざけた事を言うな!!」
部下の一人がダンゾウとナルトの会話に口を挟む。ダンゾウの一瞥に口を噤んだ彼を、ナルトは憐れみの目で見遣った。
「まあ大方、会場にいる部下には内密に伝えてあるんだろう?」
「…………」
黙視するダンゾウ。その鋭い視線を軽く流して、ナルトは双眸を閉じた。


脳裏に過る本選会場。木ノ葉の暗部に扮する『音』と、観客を装う『根』。互いに気づいていない風情の双方をナルトだけは察していた。

「うちはの生き残りが大蛇丸に攫われたら厄介な事になる。用心な貴方は、そうなる前に必ず手を打つはずだ」
事前に木ノ葉崩しがある事を知っている。大蛇丸と繋がっているダンゾウの核心をナルトは衝いた。
「ダンゾウ殿。貴方は――――」
その言葉は、折しもサスケと我愛羅の試合が開始された瞬間に発せられた。


「うちはサスケを暗殺するつもりだな?」

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