第二十一話 少年期C
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ら覗いてみる。するとチャイムを鳴らしたのが、俺の知っている人物であったことが判明。どうしたのかと思い、俺は扉の鍵を開けた。
「お兄さん、どうしたんですか。母さんに何かあったんですか?」
「そんなに慌てるな。君の母親に何かあったわけではない。迎え……といえば通じるか」
扉を開けた先には大柄な男性局員さんが待っていた。いつも母さんと一緒に管理局へ向かっていたお兄さんだ。先日はお菓子パーティーに巻き込み、寝癖でモミアゲが変な方向に曲がるのが悩みだと話していた人物である。
それにしても、まさかお兄さんがおじいちゃんの迎えだったとは。ということは、こちらの事情もある程度知っていたということだろう。全然気づかなかった。
「俺のことも知っていたんですか?」
「少しな。悪くは思わないでくれ。聞こえは良くないかもしれないが、ここの監視も含まれていたのでな。あまり話している時間もなかった」
監視。思い当る節がないわけではない。俺やおじいちゃんが反撃の準備をしていることを知っているのは少数だ。開発グループのみんなも上層部も多数の管理局員もそのことを知らない。それは大きなアドバンテージとなる。
お兄さん曰く、油断した相手のしっぽを掴みやすくでき、うまくいけば芋づる式に黒幕をあぶりだせるチャンスだそうだ。さらに裁判で会社と戦っている母さんを、抑え込みたいと思う彼らが母さんの弱点である俺たちを放置するか。そこの危惧も含まれていたらしい。
そして想像だけど、おじいちゃんがお兄さんのことを俺に話さなかったのは、俺も監視するためじゃないかと思う。さっきお兄さん自身が言ったように、相手に牙を磨いでいることを知られないことが重要なんだ。万が一俺が暴走して上層部に作戦を気づかれたら目も当てられない。こうしてお兄さんが迎えに来て、ネタばらしをするということは少しは信用されたと見るべきだろうか。
「えっと、おじいちゃんには迎えが来たら転移してこい、って言われたんですけど。お姉さんは?」
「あぁ。彼女は何も知らないからな、別の仕事を与えているそうだ。今日は俺が代わりに入ると彼女には伝えてあるから問題はない」
アリバイ工作ってわけね。アリシアもお兄さんとは面識があるし、これなら俺も安心できる。さぁ、ここからは気を引き締めていかないと。俺は懐に入れていたクッキーを握り締めながら決意を新たにした。
「……とりあえず、まずアリシアになんて言って出ていったらいいでしょう?」
「む……、腹痛とかで医務室に行くとかは…?」
「えぇー、まさかの考えていなかったパターンなの。いきなりは怪しまれないかな」
「ならば、落ちていたものを食べてしまったことにすればいけるな」
「お兄さんが俺をどう思っているのかを小一時間問いただしたい」
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