暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第二章 〜対連合軍〜
百五 〜決着〜
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 雪蓮が、冷ややかな眼で張譲を見た。
「小娘、控えよ! 私を誰だと思っているのじゃ!」
「えっと、天下の大悪人?」
「ぶ、無礼者め! へ、陛下。今すぐ、この下賤の者どもを捕らえよとお命じなされ!」
「こ、怖いよ……」
「もう止せ。貴様は終わったのだ、見苦しいぞ」
「ええい、黙れ黙れ! 陛下、お命を長らえたくばお命じなされよ!」
 短剣が、陛下の喉元に突き付けられた。
「嫌だ、嫌だよ!」
「聞き分けのない事を!」
 言っている事は支離滅裂だが、迂闊に動く訳にもいかぬ。
 今の張譲には、説得を聞き入れる事はまずあり得まい。
 あの短剣さえどうにか出来れば、赤子の手をひねるに等しいのだが。
「張譲。貴様に恨みを買う覚えなどないが」
「その通りよ。貴様はそこまで愚かではないようじゃ」」
「ならば、謀反人に仕立て上げてみせたり、交州赴任を命じたのは何故だ? よもや、全て陛下の御心のまま……とは言わせぬぞ?」
「目障りなのだ、貴様が」
「どうしてかしら? 歳三はあなた達を脅かした事があったかしら?」
「直接はない。……だが、遠からずそうなっていた事は明白よ。女子(おなご)を誑かす手管でな」
 小馬鹿にしたように、張譲は口元を歪める。
「ち、違います! ご主人様はそんな御方じゃありましぇん……あう」
「如何にも。張譲殿、いくら貴方様でも誹謗は無礼でありましょう」
「ほう。お前達までその小娘同様誑し込まれているようじゃの」
 その言葉に、朱里と冥琳の眼に怒りが浮かんだ。
「張譲。私を愚弄するのは構わぬ、だが他の者まで嘲笑する事は許さぬ」
「ほう、許さぬとはどうするつもりじゃ? この十常侍筆頭である私を斬るか?」
「高をくくっているのであろうが……」
 私は兼定を構え直す。
「う、動くでない! 陛下がどうなっても良いのか!」
「語るに落ちるとはこの事だな。陛下、宜しいですな?」
「た、助けるのじゃ! 朕はまだ死にとうはない!」
「御意」
 その刹那。
 張譲の両腕が、胴を離れていた。
「……へ? ひぎゃぁぁぁぁぁっ!」
 激痛に、張譲はその場でのたうち回る。
 噴き出す血が、辺り一面を汚していく。
「陛下。お怪我はござりませぬか?」
「怖かった……怖かった、うわぁぁぁぁぁん!」
 疾風にしがみつき、陛下は泣き喚いている。
「疾風、明命。絶妙の頃合いだったな」
「いえ、歳三殿が張譲の眼を引き付けていて下さったお陰です」
「それに、陛下のお許しもいただきましたから」
 薄暗いとは申せ、二人の太刀筋は見切れなかった。
 見事という他にあるまい。
「それにしても、二人とも何処から来たの?」
「はい。地下牢があるという事で、その入口を宮中で見つけたのです」
「疾風さんと、そこ以外には考えられな
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