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至誠一貫
第二部
第二章 〜対連合軍〜
百五 〜決着〜
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行き止まりみたいよ」
 松明で照らすと、確かに石の壁が行く手を塞いでいた。
「確かにそのようだな」
「はわわ、道を間違えたんでしょうか?」
「おかしいわね、確かにこっちから気配を感じたのに」
 雪蓮は首を傾げながら、壁を触っている。
 ……ふむ。
「松明を貸せ」
「はっ」
 兵から松明を受け取り、壁を調べてみる。
 仕掛けの類はないようだが、雪蓮の勘が誤りだとも思えぬ。
 となれば、この向こうに出る方法が何かある筈。
 試みに、押してみるとするか。
 松明を手渡し、両手を壁にかけた。
 少し踏ん張り、腕に力を込める。
 ……と。
 ズズ、という音と共に壁が動いた。
「ほう。このような仕掛けが」
「へぇ、じゃあ押してみましょ」
 楽しげに、雪蓮が私の隣に立つ。
 それを見て、他の兵らも慌てて寄ってきた。
「では、行くぞ」
「はっ!」
 数人がかりで、壁を一斉に押す。
 軽い地響きと共に、ぽっかりと空間が姿を現した。
「歳三!」
 その刹那、雪蓮が剣を抜いて飛び込んだ。
 カンッ、と金属音が聞こえた。
「冥琳、朱里。お前達は下がっておれ!」
「はい!」
「は、はい!」
 私と兵も、剣を抜いて雪蓮の後に続いた。
 暗がりから、何やら光る物が突き出される。
 咄嗟に兼定で切り払うと、それは槍の穂先だった。
「雪蓮、気をつけろ!」
「ええ!」
 待ち伏せを受けたようだな。
 敵に行動を読まれていたというよりは、仕掛けを動かす音で所在が知れてしまったのやも知れぬ。
 だが、鋭気は此方の方が十分。
 敵は追い詰められている故の必死さは伝わるが、所詮は多勢に無勢であろう。
 油断さえしなければ、制圧も時間の問題だ。
「死ねぇっ!」
「甘いな」
 繰り出される槍も、腰が定まってはおらぬ。
 緩慢な突きを躱すと、柄を掴んで引き寄せた。
「う、うわっ!」
「ふん!」
 そのまま、敵の首筋に一太刀。
「はあっ! えいっ!」
「ぐはっ!」
「ぎゃっ!」
 雪蓮が更に二人ほど、斬り捨てたようだ。
 敵は小勢だったようで、後から兵らが雪崩れ込んだ時点で片はついた。
「あら、もうおしまいなの?」
「終わりだな。参るぞ」
「あ、待ってよ」
 生き残った数名が、奥へ奥へと逃げていく。
 恐らく、張譲らはその先にいるのであろう。

「く、来るなっ!」
 宦官特有の甲高い声が、地下室に響く。
 哀れな程に狼狽しきったのは、紛れもなく張譲だ。
 そして、その手には短剣が握られている。
 小脇に抱えられた陛下は、ただ震えるのみ。
「張譲。貴様、何をしているのかわかっているのであろうな?」
「う、五月蠅い! 貴様さえいなければ……貴様さえ!」
「あらら、随分な逆恨みね」

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