暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第二章 〜対連合軍〜
百五 〜決着〜
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る場所だ。
「こんな場所に何があるんでしょうか、ご主人様」
「わからぬ。だが、探していない場所と言えば此所ぐらいのものであろう」
 話しながら、庭石を一つ一つ確かめていく。
 無論、兵らも手分けして当たっている。
 ……ふと、雪蓮が一つの石の前で立ち止まった。
「如何致した?」
「この石、何か怪しいわ」
「勘か?」
「ええ。でも、調べてみる価値はありそうよ?」
 そう言いながら、雪蓮は剣を抜いた。
 睡蓮(孫堅)譲りの業物、南海覇王だ。
「待て。それならば、私も助太刀するぞ」
「歳三の剣ね。いいわ」
「うむ」
 兼定を抜き、雪蓮と並んだ。
「じゃ、行くわよ?」
「うむ」
「せいっ!」
「ふん!」
 手応えあり、だな。
「おお、石が」
「はわわ、真っ二つです」
「ふ〜ん、流石ね。歳三の剣、刃こぼれ一つないじゃない」
「雪蓮のもな」
 割れた石を、兵らが除けていく。
 その下には、石段が姿を見せた。
「こんなところに……。しかし、巧妙に隠したものね」
「ああ。これでは見つからなくて当然だな」
「二人とも、感心するのは後にせよ。行くぞ」
 兵の一人が、心得たもので松明を持ってきた。
「土方様。先に入ります」
「頼む」
 見張りに一部の兵を残し、私達は石段を下り始めた。


 灯りが松明だけでは良く見えぬが、石段を下りきった場所は鉱山のような構造になっていた。
 頑丈な石で天井や壁が築かれ、かなり手間をかけた事が見て取れる。
「かなり古い物のようですね」
「ああ。しかも、かなり本格的なものだ。急造ではこうはいくまい」
 朱里と冥琳が、頻りに感心している。
「隠し通路ってところかしら?」
「いや、単なる通路ならばここまでする必要はあるまい。それ以外の目的もあった筈だ」
「……じゃあ、この先に陛下が?」
「可能性はある。いや、高いやも知れぬ」
「そうよね。じゃ、急ぎましょう」
 そう言うと、雪蓮はさっさと歩き出す。
 松明を持った兵が、慌ててその後を追う。
 道は二手に分かれているのだが、迷いもせずに左へと進んで行った。
「あの……。手分けしなくても大丈夫なんでしょうか?」
「信じるしかあるまい。あれの勘は、時々軍師など要らぬのではないかと思ってしまう程だ」
 表情は窺えぬが、冥琳は苦笑を浮かべているのであろう。
 肌寒さすら感じさせる空気だが、完全に澱んでいる訳でもないようだ。
 松明の炎が時折、微かに揺らめくのがわかる。
「…………」
 雪蓮は何を思うのか、無言で先頭を歩んでいる。
 必然的に、皆が押し黙る。
 いや、寧ろ不用意に喋らぬ方が良い。
 コツコツと、靴音だけが辺りに響き渡る。

 不意に、雪蓮が足を止めた。
「どうした、雪蓮?」

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