暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第二章 〜対連合軍〜
百五 〜決着〜
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だけは確かだ」
「勿論、それは大事な事だと思います。それに、ご主人様には朝廷の権威を利用されるつもりもありませんよね?」
「要らぬな。私は武人でありたいとは願うが、それだけだ。それ以上を望むのは、私には分が過ぎる」
 出自が全てとは申さぬが、私がこの国を統べる姿はどうにも想像がつかぬ。
「朱里」
「はい」
「これだけは申しておく。……国が此所まで乱れている以上、漢王朝の権威は地に落ちている。それは良いな?」
「……はい」
「一度そうなったものを盛り返す事は容易ではない。いや、不可能だな」
「…………」
 俯く朱里。
 だが、これは身を以て思い知った事でもある。
 新撰組の頃は、余力を残しているにも関わらず戦いを放棄した上様に憤りを覚えた事もある。
 旗本八万旗が有名無実化し、その惰弱ぶりに呆れ果てたのも事実だ。
 それに引き替え、薩長は新たな国を作るという使命感に燃えていた。
 遺憾ながら、今の漢王朝は最早滅び行く存在でしかない。
「お前は、何とか漢王朝を盛り立てたい。そう願っているのであろう?」
「はわわ、ど、どうしてそれを?」
 やはりか。
 劉備の存在が未だ見られぬこの世界でも、諸葛亮としての願望は同じのようだな。
「重ねて申すが、私は朝廷での地位に興味はない。然りとて、取って代わるつもりもない」
「……そう、ですよね……」
「冷酷と思うのならそれでも構わぬ。だが、遅かれ早かれ漢王朝の終焉は避けられぬ事……如何に叡智を結集しても、だ」
「私は……」
「今少し、現実を見よ。その上で、お前が何をすべきか、何を目指すかを見極めれば良い」
 そっと、私は朱里の頭に手を載せた。
「ご主人様……。申し訳ありません、このような時に」
「構わぬ。お前と、いや皆ともゆっくり話せる機会がなかったのだ」
「ありがとうございます。少し、考えてみたいと思います」
「うむ。さて、参るぞ?」
「御意です」
 少しは元気を取り戻したようだな。
 後は、朱里自身が決める事だ。


 二刻が過ぎた。
「どうだ?」
「駄目ね」
 雪蓮も冥琳も、厳しい顔つきをしている。
 広い宮中とは申せ、潜伏に向く場所は限られている。
「この図面に書かれていないところがあるのかしら?」
「可能性はあるでしょうね。ですが、それでも限界があるかと思いますが……」
「私もそう思う、朱里。食料と水に事欠かず、かつ見つけにくい場所にある部屋か……」
 冥琳の言葉に、ふと私の脳裏にある光景が浮かんだ。
「もう一カ所だけ、確かめてみるか」
「あら、歳三。心当たりがあるの?」
「心当たりと申すか、可能性に過ぎぬが」
「いいわ、行ってみましょう」
 朱里と冥琳も頷いた。

 庭園の一角。
 巨大な庭石が配され、独特の趣のあ
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