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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第52話 共工
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していたタバサの魔法使いの杖に纏い付かせた精霊の刃がそれを阻む。

 蒼と青の一瞬の交錯。
 しかし、それは、圧倒的と言える青の圧力に、蒼が辛うじて受け流している。それに過ぎない状況。

「我は祈り願う」

 炎と共に、大地に写し取られる召喚円。
 但し、これは一般的な炎の精霊を呼び寄せる際の召喚円。

 刹那。金の魔女(モンモランシー)が放てしヤドリギの矢が、タバサへと烈風の如き連続攻撃を為そうとした共工を撃つ!

「時の始まりよりすべてを生み、そして滅ぼす者……」

 しかし! そう、しかし!
 タバサへの追撃を試みようとした共工が一瞬の内に向きを変え、その右手にした長剣……いや、中国刀。所謂、柳葉刀を無造作に振るう!
 その瞬間、水の邪神(共工)と、金の魔女(モンモランシー)の間に立ちはだかる水の壁。

 金の魔女が放ちし五本のヤドリギの矢は、その水の壁に呑み込まれ、そして、いとも簡単に無効化されて仕舞った。

「輝く豊穣の女神。万物流転の源にして、闇を照らす最初の女性……」

 俺の詠唱に応じて、召喚円に炎の気が集まり始める。
 そう。俺の呼び掛けに応じて、炎の精霊が周辺一帯から集中して来たのだ。いや、それだけではない。月、そして、星の輝きさえも、その描き出された召喚円に集まり来る。

 しかし、モンモランシーの援護に因り、一瞬の空白を得たタバサが、精霊を纏わせた魔法使いの杖を刺突の形で構える。
 右半身を前に。そして、其処から力強く更に右足を踏み込み、前方へと一直線に右腕を突き出した!
 その刹那、彼女の魔法使いの杖から蒼き風が巻き起こる。

 無数の風の刃を副効果とし、共工を貫こうとして放たれた蒼い刺突。
 真空の衝撃波が大地を斬り裂き、共工の胸の甲を目指し――――。

「崇拝される者、女神ブリギッドよ。我が召喚に応えよ」

 しかし、右下方から跳ね上げられた銀光に因り刺突は払い除けられ、刺突が纏いし風の刃は、共工自身が纏う精霊の護りに因って弾かれて仕舞う。

「大いなる原初の力を持って、すべての混沌を無に帰す為に」

 紅蓮の炎が踊り、精霊たちが舞う。それは、世界。時空連続体すらも揺さぶる強大な霊力と成り、
 そして、俺が描き出した召喚円が光輝に包まれ……。

 次の瞬間。俺を中心とした世界が、紅蓮の炎に包まれた。
 俺の服を、髪を、肌を、いや、身体すべてを炎が煽り、嘗め尽くす。

 金属さえも溶かすほどの高温で有りながらも、しかし、その中心に立つ召喚者である俺を害する事が一切ない紅蓮の炎。魔性の物を滅する聖なる炎が召喚されたのだ。
 それは現実には有り得ない事実を伴い、水に支配された世界に、ゆっくりと花弁を開く紅き大輪の花の如く広がって行く。


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