第5章 契約
第52話 共工
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も不利な戦場ですから。
そして、その一瞬後、それまで感じていた下に向かうベクトルが、すべて逆転したのだった。
☆★☆★☆
時間にして、三十分も水中には居なかったはずですが……。
空中に放り出された瞬間、俺とタバサのみを生来の重力を操る技能を使用して、大地へと軟着陸を行う俺。
そして、それと同時に、周囲。俺の放り上げた巨大な質量の湖水によって洗い流された大地と、その眼前に広がる深き湖。そして、放り上げた異界の生命体の現状を確認する。
その時、世界は……。
風が、不自然に踊り始めていた。
二人の女神と、暗穹いっぱいに広がる煌めきに支配された夜が、何時の間にか闇と魔に支配された異世界。魔の夜へと浸食されていた。
呪を、霊力を、魔力を伴った風が吹き荒れ、穏やかだった湖に巨大な波を立てる。
風に、そして、俺の生来の能力に因って巻き上げられたラグドリアン湖の湖水が、土砂降りの雨の如く、地上を、湖面を激しく叩く。
そう、この風は魔風。水の邪神が巻き起こすに相応しい、水の気を伴い、異様な臭気を孕みし異世界因り吹き付ける風。
そして、闇よりもなお昏き闇を背に、揺蕩うように暗穹に浮かぶ異世界の生命体。
遙か地上を睥睨するかのように紅き瞳で見つめたソレと、その瞬間……目が、合った。
黒き巨大な身体。朱き長い髪の毛。そして……。
人間……。それも、女性の顔。
タバサが音もなく俺の腕から立ち上がった。
流れるような、舞うような仕草で……。
吹き付ける魔風を感じさせる事もなく、ごく自然な様子で軽やかにターンを行った瞬間、魔術師の証がふわりと広がり、蒼き髪の毛が闇に舞う。
そして、吐息のように紡がれた口訣が夜気を断つ。
同じく、力強く、活力に満ちた動きでタバサの動きと同調させる俺。
タバサの動きが計算と技巧の粋を極めた動きだとするのなら、俺の動きは瑞々しさ。放胆さから発する動き。
瞬間、巨大な……。美麗なと表現すべき水の邪神の顔が歪み、咆哮が遠き山に木霊した。
その刹那、黒き蛇神から放たれた複数の鞭の如き水流を、二人分の唱和から発生させた火焔が次々と撃ち落とす。
水が、蒼白き光輝を放つ炎の塊に激突する度に小規模の爆発を繰り返し、周囲を異様な熱気で包み込んだ。
そう、月下で舞うは演舞に非ず。炎を呼び寄せる炎舞。
黒き蛇神より放たれる水流が、月下に荒れ狂う湖面へと降り注いだ。
元々、炎系統に関しては得意としていない俺とタバサが呼び寄せる炎では、水の邪神の水流を完全に無効化する事が出来る訳はない。
これは、神を降ろす舞い。神を降ろし、魂を鼓舞する舞い。
俺の腕に、タバサの腕が重なる
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