第5章 契約
第52話 共工
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抜けて行けるはずです――――――。
ぞわり……。
二人だけでも十分切り抜けて行ける。そう考え始めた瞬間。何か、得体の知れない気配が水底にて動き始めた……。
そして、腐臭が更に強く成る。
水が巨大な質量を持つ何モノかが動く震動を伝え、
そいつは、精神を、簡単に砕きかねないほどの狂気を撒き散らせていた……。
「タバサ。これから顕われる奴は、今まで出会って来た奴の中でもトップ。おそらく、カジノの時に顕われたケモシ以上の奴に成るのは間違いない」
俺の腕の中で、タバサが首肯く。
肌の表面が粟立つような悪寒に似た何かを感じ、心の奥底から湧き上がって来る潜在的な恐怖心が、無暗矢鱈と絶叫を放とうとする。
いや、腕の中にタバサが居ず、傍らに湖の乙女が居なければ、間違いなく、正気を保っては居られないであろう。そう言う異常な気を発して居る存在に、俺達が近寄って行っている事を感じ始めて居たのだ。
【これから顕われるのは、元は神話上でニーズホッグと呼ばれた存在だった、そうやな】
俺は、出来るだけ平静を装いながら、湖の乙女に対して【念話】を送った。
ニーズホッグ。怒りに燃えてうずくまる者と言う意味の、北欧神話に登場する黒き蛇。世界樹の根本に多くの蛇たちと共に住むと言われている。
しかし、ここに顕われるのは、おそらくはそのニーズホッグではない。
先ほどこの場に顕われた蛇は、相柳。ならば、相柳を従える蛇と言うのは……。
まして、伝承上に残っている記録に因ると、奴が顕われる際は、必ず水害が発生している。
そう。ラグドリアン湖が異常増水している、現状のガリアのように……。
深き底より急速に浮上して来る巨大な黒い影。毒に濁った水に、紅き瞳が不気味に光る。
神話の中で千年以上に亘って登場し続け、古代の三皇五帝たちと争い続けた悪神。
【共工は俺の能力で地上に放り上げる】
俺は、全ての能力を上に向けながら、湖の乙女に対して【念話】を送る。
同時に、俺が維持し続けていた避水呪をタバサが引き継いだ。但し、それだけ。現在の彼女では、空気を供給し続ける事が出来ませんから。
そして、次の瞬間。俺の生来の能力で発現した不可視の腕が、何か巨大な質量を掴み上げる。必要なのはイメージ。丹田から頂点に突き抜ける霊力の流れ。
精神の腕で掴み上げ、空中に水と俺達ごと放り投げる。
その刹那、湖の乙女から、肯定を示す【念話】が届けられた。
これは、俺とタバサが共工の相手をしている間に、ミーミルの井戸を封じてくれ、と言う提案を彼女が了解してくれたと言う事。
それに、水中での戦い。それも、ミーミルの水の中での戦闘など俺達に取って、あまりに
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