『彼』とおまえとおれと
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青山の席から離れた二人をクラスメイトがわっと取り囲んだ。
「木下!おまえついにやったじゃん!」
「遅ぇよやっと言えたのかよ〜お前何年かかってんだよ!」
「いつくっつくかって俺らマジでやきもきしてたんだからな?」
「おまえマジでおごれよ!」
「おめでとう!ほんともー二人ともじれったいんだからぁ〜」
ぽかんとしてついていけない日紅をよそに犀はもみくちゃにされてあちこち殴られたり叩かれたりしている。
青山が『やっとくっついた』と言うわけである。日紅に焦れた段々大胆になっていく犀の行動は誰の目にも明らかだったようだ。
「やめろって!日紅が驚くだろうが!散れ!」
「うわ、こいつ彼女できた途端威張り散らしやがって!」
「敵だ敵!女紹介しろ!」
「日紅ちゃん見てよこの俺様。こんなやつやめて俺にしない?」
「は?ぶっとばすぞ」
「そうだよーやっと片思いが実ったんだからみんなで祝ってあげなきゃ」
人垣の向こう、教室のドアごしに誰かが輪に入るわけでもなくこっちを見ていた。
「…あ」
日紅ははっとした。
日紅と目があったと思った途端にその人は踵を返す。
クラスメイトにいじられているのは主に犀だ。日紅は人をかき分けてその人影を負った。
「待って」
教室を出て見回す。いた。階段を降りようとしている女の子に日紅は駆け寄った。
「待って、桜ちゃん」
桜は振り返った。まるで日紅が追いかけてくるのが最初からわかっていたかのように。
「桜ちゃん。あたし」
「木下君の事好きなの?」
淡く微笑む桜は視線を日紅に合わせたまま言った。
犀のこと。
本当のところ、日紅は自分の好きが犀の好きと同じではないとわかっていた。
つい先日まで、友情の好きも、愛情の好きも、なにも見ようとしなかった日紅だから、まだ愛情の大きさとかそんなことなんて何にもわからない。胸を張って犀の事が恋愛の意味で好きかと言われれば戸惑ってしまうだろう。
「好き」
でもその言葉はすんなりと日紅の口から出てきた。
あまりにも当たり前のように出てきたので日紅の方が少し驚く。それからその言葉はゆっくりと日紅の心に染みた。
うん。そうだ。あたしは犀が好き。その隣にあたし以外の女の子がいて欲しくないと思うくらいには犀の事が好きなんだ。
「そっ
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