第5章 契約
第51話 湖の乙女
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それも、神事が始まる『夜明けの晩』と言われる時間帯。
う〜む。どうも、時間帯からすると、湖の精霊の手に因って、あっさりと、このラグドリアン湖異常増水事件が解決するとは思えないような、微妙な時間帯ですか。
確かに、タバサの体調を考慮したのなら、夜間に湖の精霊と接触して、それから、太陽が昇る前に事件のあらましを知って置く方が良いのですが、夜とは、魔と言う属性に含まれるモノたちが活発に動く時間帯でも有りますから……。
胸の前で腕を組み、ただ、水の精霊が水中へと消え去った場所を瞳に映しながらも、心は何処か別の場所で遊ばせていた俺と、俺の右肩の高さに視線を置いて、俺と同じように水面をただ見つめ続けていた蒼き吸血姫。
刹那。俺達が立つ湖の畔から、大体二、三十メートルほどはなれた水面が輝き、寄せては返し、返しては寄せる、を繰り返していた波以外の、漣のようなモノが立ち始めた。
その瞬間、タバサが俺の前に一歩踏み出した。それは……そう。まるで、俺を護ろうとするかのような配置と言ったら伝わり易いですか。
……この彼女の行動から察すると、ラグドリアン湖の精霊と言うのは、危険な存在だと言う事なのでしょうか。
しかし、不意打ちを行う相手なら、この如何にも、これから登場しますよ、と言う雰囲気を演出する訳はないと思うのですが……。
やがて、俺の式神の水の精霊が湖から上陸して来て、俺とタバサの後ろに付く。
そして……。
ラグドリアン湖の精霊が顕われた瞬間、タバサから、少し驚いたような気が発せられた。
但し、俺に取っては別に驚くような事態は起きていないのですが。
何故ならば、俺の式神の水の精霊に続いて、一人の少女。あの夢の世界で出会った紫の髪の毛を持つ少女が、俺とタバサの正面に水中より顕われただけですから。
「矢張り、ラグドリアン湖の精霊って言うのは、お前さんの事やったんやな」
俺の、旧知の相手に対する問い掛けに、湖の乙女と名乗った少女が、俺を真っ直ぐに見つめた後に、小さく首肯く。
但し、同時に少しの違和感を発した。これは、少し会わない間に変わって仕舞った俺の見た目に対する違和感でしょう。
しかし、其処まで。彼女は、それ以上は何も問い掛けて来る事は無く、そのまま、深い湖の深淵を覗くが如き瞳に俺を映すのみで有った。
その仕草は矢張り、タバサにそっくりの反応。これではまるで、良く似た姉妹と言う感じですか。
雰囲気も似たような雰囲気。そして、銀のフレームと、紅いフレームの差は有りますが、それでもメガネ装備で有るのは同じ。髪の質は、タバサの方がクセは少ないようですが、共にシャギーカットのショート・ボブ。まして、幻想世界の住人に相応しい蒼
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