第5章 契約
第51話 湖の乙女
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けではない。
独りで歩いて行く孤独に耐え切れず、彼女の手を取った訳でもない。
「そう言う約束、やったやろう?」
共に歩いてくれる彼女を、変わって仕舞った瞳に映しながら、そう問い掛ける俺。
もう一度、繋がれた彼女との絆を確かめるかのように……。
☆★☆★☆
煌々と照らし出される夜空を滑る翼ある竜。
雄々しき翼を広げ、夜の大気を斬り裂き、果ての無い茫漠とした空間との距離を縮めて行く。
空には紅と蒼。二人の女神に祝福されしこの世界の夜は、俺の知って居る世界の夜に比べると明るく、
そして、地上の灯火によって邪魔される事のない暗穹には、名前も知らない星が瞬いていた。
そう。其処に存在していたのは宇宙そのもの。ここが、分厚い大気の層の深海に存在する場所などではなく、宇宙の一部だと実感させられる遙かな高み。
七月、第一週、イングの曜日。
……いや、正確には後少し。時計の針が後、二十度ほど動けば、明日。オセルの曜日となる時間帯。
尚、命令を受けたのが昼の間なのに夜に成ってからの移動と成った理由は、タバサの体調を考慮したから。流石に、覚醒してから日の浅い彼女には、夏の昼間の飛行は身体に掛かる負担も大きくなるだろうと思っての、夜に成ってからの出発となったのです。
「そうしたら、タバサ。ラグドリアン湖異常増水事件に関しての調査方法は何か当てが有るのか」
最早指呼の距離となったラグドリアン湖を前にして、蒼き姫に問い掛ける俺。
陰、静などの属性の他に、夜と言う属性を得た少女が、俺をじっと見つめる。出会った時のままの、その蒼き瞳で……。
そして、
「貴方の式神の水の精霊に、ラグドリアン湖の精霊を呼び出して来て貰う」
至極、簡単な答えを返して来るタバサ。
そして、それは俺の調査方法も同じです。確か、以前に聞いた話に因ると、ラグドリアン湖の精霊とは、湖の底の部分に自らの国を作って暮らしていると言う話なので……。
おそらく、地球世界の伝説に存在している水晶宮のようなモノを造り上げて暮らしているのでしょう。
尚、本来の水晶宮とは、別に水の底に存在している訳では無く、位相をずらした異空間と言うべき場所に存在している、……と言う事で有って、海底宮殿宜しく、水の底に宮殿が建っている訳では有りません。
伝承上の水晶宮と言う物は。
そして、俺が向こうの世界で所属していた水晶宮とは、龍種の互助会制度のようなモノ。例えば仕事の斡旋などを行う組織で有って、実際に海を支配していた訳では有りません。
もっとも、嘗て……。一九九九年以前には別の役割が有ったらしいのですが……。
「ラグドリア
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