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故郷は青き星
第二十話
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ている。
「だからネカマじゃないって言ってるでしょう!!」
 そう叫ぶ彼女の声に、周囲のプレイヤーも驚いてこちらを振り返る。そして、ああまたかという顔をすると、何か文句を言うでもなく諦めて向き直ると元の話題へと戻っていく。
 周囲の反応が今回のような事が一度や二度の事では無いと証明していた。

「また絡まれてるの? 大変だね」
 少し間延びしたゆっくりとした口調で話しながら恰幅の良い大仏顔の尾津が現れる。
「こんにちは尾津さん」
「尾津が遅いから変なのに絡まれただろう」
「悪い悪い。ちょっと部活が長引いたんだ」
「そういえば尾津さん剣道部だったか」
「そう。一応は部長だからね」
「……へぇ部長だったんだ」
 大学2年で部長ということに柴田は少し引っかかるものを感じたが、余り部員の多くないのだろうと納得する。
「何よ! 私を無視して勝手に世間話を始めてるのよ!」
 放置されていた梅本が癇癪を起す。
「自意識過剰だな。無視とは意識して行うもので我々は意識するほど君には興味が無い」
「単に忘れていただけだからそんなに怒らないで」
「梅本さん。彼等には全く悪気は無かったんだよ。許してやってもくれないかな?」
 山田、柴田、尾津の流れるようなトリプルアタック。後に多くのプレイヤーから腹黒き三連星と呼ばれ恐れられる伝説の第一歩だった。
「ふ、ふざけんなっ!」
 梅本は肩を震わせて叫ぶが、3人が彼女を振り返ることは無い。完全に意識した無視である。


「いい加減、ネカマの梅ちゃんに絡まれるのは嫌なんだけど」
 柴田は完全に梅本がネカマ前提で話し始める。
「俺もあいつの相手はうんざりだ」
「僕は彼女はネカマじゃなく、そう昔の言葉で何かあったよね。えっと……あっ、ツンデレだ」
「ツンデレ?」
 柴田と山田が同時に突っ込む。この時代「ツンデレ」という言葉は一部のサイトでは時々見かける言葉だが、既に半ば死語と化していた。
「気になる相手にデレデレと甘えたいんだけど、ついツンとした態度で接してしまう不器用な女の子……のことだっけ」
 尾津もいまいち自信が無かったようだ。
「ツンデレだとさ柴田君はどうなんだ?」
 山田は柴田を見やるとニヤリと笑う。
「ツンデレでもネカマでも、どっちだろうと梅ちゃんじゃ友達としても無理だよ」
 何で俺に聞くのかなぁ〜と思いながら答える。
「こっちこそ、アンタなんてお断りよ!」
 まるで柴田の答えを待っていたようなタイミングで梅本が噛み付く。

 こんな4人だったが、この一ヵ月後には同じチームを組む事になるのだった。
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