第九十五話 神人、目覚める
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ええ。それはわかっているけれど」
しかしであった。どうにも引っ掛かるミサトであった。
「この娘ってひょっとして」
「あら、ミサトもわかったのね」
ここで遥がくすりと笑ってミサトに囁いてきた。
「キム少尉のことが」
「というとやっぱり?」
「そうなのよ。八雲司令のことがね」
「成程。だからなのね」
「そういうことよ。そこは気をつけてね」
「ええ」
遥の言葉にこっそりと頷くのだった。
「わかったわ。そういうことならね」
「宜しくね」
「わかったわ。それでは」
ミサトは真面目な軍人の顔になって敬礼してから八雲達に対して述べた。
「オーバーロード作戦、成功させましょう」
「はい、是非共」
八雲もそれに返礼する。こうして彼等の作戦ははじまるのだった。
その頃東京ジュピターでは。一人の少年が電車に乗ろうとしていた。
灰色の髪の線の細い少年だった。繊細な外見の彼は物憂げな顔をしておりその顔でふと呟くのだった。
「はあ・・・・・・」
まず溜息をついてから。
「世はこともなし、か」
退屈に飽いている顔であった。それは声にも出ていた。
その顔と声で定期を改札口に通した。するとそこで。
「よお綾人」
「おはよう」
少年と少女の声が聞こえてきた。
「どうしたんだよ、今日は」
「何かあったの?」
「別に」
綾人と呼ばれた彼、神名綾人はその憂いの漂う顔で二人に返すのだった。
「何もないけれど」
「じゃあ何でだ?」
「そんなに元気がないの?」
「別に」
俯いた調子でまた二人に返した。
「何もないからね」
「また随分と変な言葉だな」
「何もなくていいじゃない」
少女が少年に声をかける。
「平和が一番ってね」
「そういうことかよ」
「そうそう。それで神名君」
「うん」
綾人は少女の言葉に応えた。6
なおこの少女は彼のクラスメイトでその名を朝比奈浩子という。少年は鳥飼守という。
「どうなの?」
「どうなのって?」
「だから。絵の方よ」
「今日も朝まで描いてたよ」
こう浩子に答えるのだった。既に改札口を通ってそのままプラットフォームに入る。そのまま静かに電車に乗るのであった。それに浩子と鳥飼も続く。
「朝までね」
「一睡もしていないの?」
「うん」
また浩子に答える。
「そうなんだよ。けれど疲れていないしね」
「徹夜でかよ」
鳥飼はそのことに驚いていた。
「またそりゃ凄いな」
「自分でもそう思うよ。とにかく全然疲れていないんだ」
また答える綾人だった。
「全然ね」
「じゃあ学校でも平気ね」
「いけるよ。今日は何があったっけ」
「数学と化学と古文と世界史で?」
「午後は英語のグラマーと体育だったよな」
「そうなんだ。体育があったんだ」
「そうよ。まあいつも通りね
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