第四話 百年後、異世界
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でも給料もらえなくてもどうにかなるでしょ?生きていく分には。」
「まあ、最低限ならね………。」
笑うのをやめたアリスの言葉に、絶望したかのような声色で返事を返す誠也。
アリスの言うとおり、管理局勤めである以上最低限生きていく分には給料がなくても一切問題ない。
寮はそもそも最初から天引きで、衣服についても支給品があるし、食事も最低限ならば支給される。
つまり最低限の衣食住は保証されているのだ。給料がなかったとしても生きていく分には何一つ問題ないのである。
そう、《ただ生きていく分には》、である。
「三カ月携帯食料づくしとか………。死にたい………。」
携帯食料。
文字通り携帯できる食料である。
50年ほど前に完成したとある技術により、その時から現在に至るまで携帯食料の需要はかなり高くなっている。開発される以前と以後ではその数十倍ほど変化している。
需要は発明の母とはよく言ったもので、それにより携帯食料の発展は非常に著しい。
しかし、なぜだろうか。携帯食料に関する技術的発展は栄養価や腹もち、生産性にのみ偏り、味と言うものが置き去りになっているのである。
はっきり言ってしまうのならば、まずい。
無味無臭過ぎて美味しくなく、むしろ薬のような感じすらしてしまうのだ。
ただ、そのおかげと言っては何だが、高すぎる生産性ゆえに、安価で飢えを防ぐには十分役立っているという大きなメリットも存在している。現に誠也のような減給で給料がなくても働いてさえいれば携帯食料が支給され、飢え死にとは無縁になっているのだから。
しかし、まずいものはまずい。
いくら飢えをしのぐためとはいえ、三カ月もそんなまずいものを食べ続けるのはただただ苦痛でしかない。
とはいえ、美味しいものは携帯食料含めて有料であることが多く、お金をもらえない誠也はまずい携帯食料で我慢しなければならなかった。
「ま、あきらめるしかないでしょー。自業自得だから仕方ないし………。あ!」
アリスは何かにひらめいたように声を上げる。
そして誠也を見ながら何かいたずらを見つけたような嫌らしい笑みを浮かべる。
「ふふふ〜。誠也ー、はい、あーん。」
にやにやといった擬音が似合う笑みを浮かべながら、スプーンに載せた食事を誠也に向けて差し出す。
誠也はそれを見て、ついごくりと喉を鳴らしてしまった。
実はアリスが今食べている食事は、とある有名店の限定弁当なのだ。
それはなかなか手に入るものではなく、しかも向こう三カ月は食べたくても食べることができないことが確定しているのだ。
できるなら食べたい。
しかし、アリスの浮かべている笑みが警戒心を煽る。
誠也は食欲と警戒心のはざまで葛藤する。
そしてついに食欲が勝ち、差し出されたスプーンに食らいつこうとする。
が、しかしその直前、アリスは差し出
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