第十三話 鏡月
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鏡月は右手で顔を隠しながら、そう呟き。
そのまま、俺に刺さっている大剣の一本に手をかけた。
「しかしまぁ。 チェックメイトであることには変わりません。 貴方はこの一本さえ抜けなければ、蓄積ダメージで死ぬのですから。
どちらにしろ、この戦い、私の勝利であることには変わりません」
鏡月の言う通りだ……。
どちらにしろ、ここで俺の悪あがきは終わり……。
「ああ、俺の負け……」
そこで、俺は一度区切った後。
パチン、と指を鳴らし、笑ってやった。
「とでも言うと思ったのか!? 鏡月!」
「……何を言っているんです?」
鏡月がそう疑問を口にした瞬間。
風切り音と共に、鏡月の体に数本のナイフが突き刺さった。
「これは……まさか……」
落ち着いた反応で鏡月は己の体に突き刺さったナイフを眺めた後、顔を上げる。
そしてその瞬間。
「察しの通りだよ。 鏡月」
まるで瞬間移動の如く現れたヘヴンが、鏡月の体を蹴り飛ばした。
筋力がない故に、派手にこそ飛ばなかったが、俺と距離を取らせるには十分すぎた。
俺はその隙を見計らい、残りの大剣を引き抜き、回復アイテムを使う。
「……HeavensDoor。 貴方はこの戦いに手出しはしないと思っていましたが……」
鏡月は右手で表情を隠しながらそう呟いた後。
ゆっくりとその右手を撫で下ろすと、営業スマイルを浮かべながら諦めたようにため息を吐いた。
「もしアルス様が復活すれば攻略組一人と高レベルプレイヤー一人。 さらにこの組み合わせでは些か分が悪いですね」
そんなことを呟く鏡月に、ヘヴンが手にナイフを構えながら反応する。
「……だったら、どうする?」
そんな冷たい声で放たれた一言に、鏡月はしばし無言でこちらを見つめた後。
「まぁ、どういう意図があるのかは存じませんが、今回は引きましょう。 アイテムも渡します」
そう口にして、そのアイテムをレジストリから取り出すと、こちらに向けて投げてきた。
ヘヴンはそれを無言で受け取り、確認した後。
そのまま、ユイスリーへと放り投げる。
当然の如く、ユイスリーはそれを受け取り、そのままアイテムを浄化した。
その様子を見て、鏡月はニコリと微笑んだ後、踵を翻し、俺達に背を向けた。
「では、また」
そうして、その台詞だけ残して、その場に落た武器も回収せずに、姿を消していった。
……終わった、のか。
「はぁ〜……、マジで死ぬかと思ったぜ。 今回ばかりは感謝してもしきれないな……」
思わず、安堵の吐息と共にそんな台詞が漏れる。
しかし、ヘヴンは無言で鏡月が消えた方向を見つめて固まっていた。
……どうしたんだ、コイツ?
「お、おい、どうした?」
心配になり、そんな言葉をかけたその瞬間。
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