第十三話 鏡月
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、だがッ!!!
ユナがハートの5を切り、スユアの番に回ったその時。
「リーチ!」
スユアは、手札からダイヤの4を捨て、リーチを仕掛けた。
危険を冒してまでのリーチ。
ユナは、その事態に理解できずにいた。
それもそのハズ。
こんな無謀な行為は、スユアのギャンブラー魂によるものである。
スリルでリスクを削るギャンブル。
それが、スユアの最も好むところで、改心したスユアなりの拘りだった。
ユナの番に周り、ユナは思考を必死で張り巡らす。
出ているカードと、相手の手札を予想し、計算を繰り返す。
山札から引いたカードは、ダイヤの3。
そこで、ユナの手が止まる。
『危険牌』
脳裏にそんな言葉が焼きつき、カードを捨てられない。
だが、捨てるしかない、その状況で。
ユナの脳裏に過去の記憶がフラッシュバックした。
煙草の匂い、牌を打つ音、見知った三人の仲間達、転がった缶ビール。
そして、窓の外で白んでいく空。
あの頃学んだものはなんだったのだろうか。
あの頃遊んだ仲間達から教えられたものはなんだっただろうか。
あの頃の青春は、無駄だったのだろうか。
いいや……無駄なものなんかではない。
あの頃の、ユナの、否、彼の青春は……。
「博打とはっ!」
突如、ユナは声を荒げてそう叫ぶ。
そして、手札から一枚のカードを取り、場に叩きつけ、叫ぶ。
「諦めない度胸だっ!!」
出されたカードはダイヤの3。
それを見て、トリシルやファルコン、ござる、ナイト、レイカはユナの叫び声に驚いていたが。
スユア一人だけは、違った。
危険牌、ほんの数が1違うだけで直撃するその牌を、こう易々と切れる精神。
勝ちへの渇望。
最悪、自分の手牌を崩して安全に走るのではなく、勝ちに来たその意気込み。
それに、スユアは痺れ、戦慄し、驚愕した。
己と同じ、ギャンブルジャンキー、博打の中毒者。
そんな心を、自分よりも年下の、こんな少女が持っていることに、心を打たれていた。
同時に、スユアもユナを好敵手として認識する。
同じギャンブルジャンキー。 博打中毒、ギャンブラー!
それに対する対応は、スユアの本気だった。
スユアは山札からカードを一枚引き、それを見ずに、その場に捨てる。
それはどちらの上がりでもなかったが、ユナはそれに心震えた。
一切の迷いもなく、これは違うと直感して、即座に捨てたその心意気。
ユナは、笑みを浮かべた。
それは少女としての笑みではなく、恐らく、彼本来の笑み。
それに呼応するように、スユアも意地の悪い笑みを浮かべる。
そんな二人の様子を、その場にいる人間の殆どは理解できなかった。
今まで無言でそれを見ていたシャムを除いては
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