第4章 聖痕
第49話 太歳星君
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を語っているのだ。
そう。繋がりを断たれたのなら、再び結び直せば良い、と……。
そして、奴にはここで俺達と戦わなければならない理由はない。逆に俺達は、ここで奴を倒さなければ、自らの縁者に対しての凶事を防ぐ事が出来ない。
普段通り、タバサを見つめる俺。
ゆっくりと首肯くタバサ。
そして、
「私が彼を止めて置けるのは僅かの時間です。その間に……」
術式を維持しながら、俺とタバサに対してそう告げて来る妖精女王。その表情には余裕もなく、声には明らかな焦燥の色が滲んでいた。
古き大地の神ティターンの娘でも、奴を止めて置けるのは僅か……。
しかし、
「すまんな、妖精女王。せやけど、五分も必要ないで」
俺の返事。その瞬間に、タバサと視線を交わらせる。
その一瞬後、再びの大地の鳴動。そして、太歳星君が消えて行った地点から、大地自体が赤く染まり始め、木の根に似たモノが地面を進み、四方八方に広がって行く。
そして、その次の刹那……。
そこから。あそこから。大空洞内の有りとあらゆる場所から太歳星君の瞳が顕われ、
恨み、憎悪、怨嗟。有りとあらゆる負の感情を撒き散らし、俺とタバサを瞳に映す。
紅い、朱い、赤い大地。
べちゃり、と気味の悪い糸を引く飛沫が、其処かしこから飛び散る。
そう。人間の筋肉や内臓。そして、脳味噌を狂った芸術家が自らの芸術性を誇示するが如く組み上げた腐肉による大地。紅く、朱く、赤く走る血管。大地が不気味に蠢く度に腐汁に似た体液が溢れ……。
耳を穢し続ける怨嗟の声が腐肉の表面から発せられ、濁った瞳が、憎しみに満ちた視線で俺と蒼き姫を映す。
その瞬間。傍らに立つ蒼き姫が、俺に完全にその身を預けた。
そして、それと同時に、俺は彼女に精神を明け渡す。
高く掲げし右手の先に顕われる聖なる槍。
イメージする。丹田に渦巻く巨大な龍を。
暴走寸前の霊力を、俺が制御する。
脊柱を走り抜け、右の琵琶骨を抜け、掲げられた聖なる槍に霊力を注ぎ込む俺。
伝説に語り継がれし槍を持って、この地を穢せし邪神の核を排除する為に……。
二度目故にか、それとも、タバサ自身が俺の霊力の制御に長けたからか。
霊力の収斂は即時に、そして確実に行われ、牛角の邪神と相対した際の半分の時間で為す。
そして……。
そして、無造作に俺の右腕が振り下ろされた。
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