第4章 聖痕
第49話 太歳星君
[11/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
姫の表皮を爆ぜさせた。
しかし、その程度の害など無きが如し。俺も、そして、タバサにも精霊の加護が存在する。防御力に関しても常なる人に非ず。
『傾ける天秤を吊りあわせる術を我に』
そして、次の刹那、十分な間合いと、技量によって裏打ちされた正面からの槍の一撃が、精霊を纏いし蒼き姫を襲う!
そう。ヤツに取って、塵芥に等しい俺やタバサが抵抗を続け、更に未だ有効な攻撃ひとつ行えない苛立ちや憎悪を物理的な破壊力へと転化し、すべてを貫く必殺の一撃が放たれたのだ。
しかし、次の瞬間。巻き上げられ、高く跳ね上げられたのは太歳星君の槍の方。
そう。その一瞬前までタバサが居たはずの空間には、既に体勢を入れ替えた俺が待ち構えていたのだ。
周囲を真空状態にして、すべてを巻き込みながら突き出されて来た死の刺突に逆らう事なく刃を滑らせ、最後の瞬間に下方から右上方部への重力の移動と、太歳星君自身の槍の持つ、すべてを巻き込もうとする呪力を利用して、槍を跳ね上げて仕舞ったのだ!
『この穢されし大地を清め、聖なる水をこの地に注ぎたまえ』
その妖精女王に因る最後の呪文が紡がれた瞬間、倒れた環状列石の巨石群に、それまでとは違う、巨大な霊力が沸き起こった。それは環の中を巡り、一周ごとに速度を、そして、霊力を増して行く。
霊力が巡る度に眩き光りを発する巨石。その一瞬毎に表面に浮かぶ漢字を思わせる文字。
そして、限界まで高められた霊気が徐々に、異界により浸食されていた世界自体の浄化を始めた。
そう。殺人祭鬼に因り穢され、侵された聖域が、太古からそうで有った姿。妖精の女王と歴代の古代の王たちによって護られた聖域の姿を取り戻しつつ有るのだ。
槍を跳ね上げた事により無防備と成った左わき腹に、氷の刃を纏いしタバサの魔法使いの杖が斬り付ける。
その動きは正に舞い。俺が動なら、タバサは静。
海からの贈り物を散りばめし白き絹が裾を翻し、タバサは舞う。
しかし! 相対するは伝説に名を残せし太歳星君。絶体絶命に等しい斬撃を、自らの棍を操りし腕を犠牲とする事に因って、俺とタバサの間合いから辛くも脱する。
刹那、太歳星君が吠える。その声は大気を、そして、大空洞の大地や天井を不気味に震わせる。その後、最早、長剣と棍を失い、槍のみと成った己が武器を地に投げ捨て……、
そして……。
元の赤き肉塊へと変化して行く太歳星君。
その瞬間、再び、呪われし瞳に俺とタバサを映すが、今回は最後に残った魔法反射により無効化。
次の刹那。周囲の雰囲気が再び一変した。
清浄なる聖域に等しい雰囲気から、再び、穢れた不浄の気へと。
大地に半ば溶け込むように成っている太歳星君の姿が、その訳
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ