After days
summer
水城家潜入
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目は化学。理系全般が苦手な自分にとっては中々苛酷な科目だ。
「何よ。カニッツァロ反応って……言い難いんだけど」
ブツブツ言いながら教室を出て食堂に向かう。今日は確か和人は来ない日のはずなので同じクラスの螢もおちおち来るだろう。
「あ……」
ゆっくりとした歩調で歩く長身の人影。向かう先は自分と同じ食堂。
「やっほー、螢。お元気?」
背中をバン、と叩きながら挨拶をする。
「……よ、リ……里香」
SAO時代も街でたまに見掛けると、こうして挨拶をしていたので、間違えたようだ。自分でもそれが解っているだけに苦笑しながら呼び名を訂正した。
「ふふ。あっという間だね。帰ってきてからもう半年と1ヶ月だよ」
「そうだな……てか、年寄くさいぞ。もうちょっとヤングな言い方はないのか?」
「うるさいわね。何よヤングな言い方って」
「知らん」
「じゃあ言うな!!」
ビシッ、とツッコミを入れるタイミングも最早お馴染みだ。
明日奈なんかは何を勘違いしているのか、「付き合ってるの?」何て訊く始末だ。
(……そういえば)
螢/レイにその手の噂を聞いたことがない。考えてみれば不思議だった。
特別、顔立ちは悪い方ではない。大目に見積もって中の上。今はその面をぼんやりとした表情で台無しにしている訳だが、ゲーム内での戦闘時や現実でも何かに取り組む時の顔は別人だ。
そんな彼に浮わついた噂の1つも無いのが気になった。
――食堂。
「ねぇ、ちょっと訊いていい?」
昼御飯を食べ終わり、食後の紅茶を飲みながら一応、遠慮がちに訊ねる。
「ん、珍しいな?」
実際、私が遠慮がちに質問することはほとんど無い。だから螢も視線を手に持つお茶から放し、こっちを見る。
「あの、さ。あんたって彼女とか、好きな人とか居ないの?」
そう訊ねた瞬間、螢はUMAでも見たよな表情をし、次いで微笑する。
「何だよ。ついにやつから乗り替えるのか?」
「私のことじゃ無いわよ。あんたのこと!」
「それ、今じゃなきゃダメか?」
「ダメ。あんたはそれで何時も話をはぐらかす」
螢の笑みは少し困ったように変わった。それから何かを思案するように目を瞑り、しばし黙考する。やがて目を開けると、ポツリと言った。
「俺の恋は一生に一度だけ」
その目はどこか寂しそうで声は自然と胸に染み渡る静かなものだった。
「それは4年前に始まって、未だに、そして永遠に片想い。……だから、俺にそうゆう存在は居ない」
言い終えると再び、目を閉じ、
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