A's編
第三十話 裏 後 (シグナム、アリサ)
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の謝罪が浮かんだのは、彼女が最期まで騎士だったかだろうか。
理由はともかく、その想いを最後にシグナムの意識は、完全に闇に包まれ、闇の書の守護騎士だったヴォルケンリッタ―は一人の女性とデバイスの前に全滅したのだった。
◇ ◇ ◇
アリサ・バニングスは、机の上に広げられた一枚の便箋を前にして頭を悩ませていた。テストでもここまで悩んだことはなかっただろう。しかし、今は悩まなければらない。悩むところである。なぜなら、これは彼女の親友である蔵元翔太へと送る手紙なのだから。
なぜ、彼女が翔太へ手紙を書こうと思い至ったのか。それは、アリサが母親と一緒に夕飯の食後の時間を過ごしている時に起因する。
「はぁ……」
「どうしたの? アリサ。ため息なんて吐いて」
アリサとしてはため息を吐いているつもりはなかった。しかし、悩んでいるときというのは、ため息が自然と出てしまうものである。それが答えのなかなか見つからない悩みであればなおのこと。アリサも類に漏れず自然とため息を吐いていた。
悩んでいることを看破されたアリサだったが、母親に話していいものか少しだけ迷った。翔太に関することだったし、悩みは、なかなか彼に会えなくて謝れない、という単純なものだったからだ。時間さえできてしまえば簡単に解決する問題だからだ。こうやって、ずるずる伸びているのが謎なくらいなのだから。
だが、確かにアリサもこの状況を打破したいとは考えていた。だから、アリサは母親に相談することを決めた。
ふんふん、とアリサから話を聞く梓。さすがにアリサも整理できてないところもあるのか、話が飛んだりもしたが梓は最後まで聞いた。そして、最後まで話し終えたアリサに出した答えは―――
「そうね、手紙を書くといいわよ」
「手紙?」
梓の答えにアリサは小首を傾げた。アリサからしてみれば、手紙は前時代的なもののように感じたからだ。今は、携帯とメールがある。手紙という古風なものがこの状況を打破できるとは思えなかったからだ。
しかし、そんなアリサの主張を聞いた梓はからからと笑った。
「アリサ、それは違うわよ。確かにメールは便利よね。でも、誰が書いても同じなの。でも、手紙は人によって違うの。そこに込められた想いも、願いも。だから、本気で彼にアリサの思いを伝えたいなら、手紙を書きなさい」
真剣な表情をして語る梓。確かに手書きならば、文字となって思いは現れるかもしれない。梓の言葉を聞いて、一考の余地はあるかも、と思うアリサ。そんな娘にさらにアドバイスする梓。
「それに、差出人を書かずに呼び出せば、必ず翔太くんは来るわよ」
「どうしてよ? 差出人がないのよ」
普通に考えれば、怪しい呼び出しだ。
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