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リリカルってなんですか?
A's編
第三十話 裏 後 (シグナム、アリサ)
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、せっかくザフィーラが決死の覚悟で稼いでくれた時間さえも無意味なものへとなってしまう。

 ―――何とかして時間を稼がなければ。

 しかし、どうやって? 残念ながら、シグナムには良案がなかった。今は一瞬でも、急ぐことしかできなかった。しかし、どうやら天はシグナムに味方してくれたようだった。

 不意に女性の近くの空間が揺らぐ。その前兆をシグナムはよく知っていた。頼りにすべきもう一人の仲間。どうやって、かはわからないが、ともかく彼女が助けに入ってくれたようだ。この場においては強力な助けだった。

 シグナムが期待したその瞬間は訪れた。空間の揺らぎ―――女性の胸元あたり―――から突然飛び出す人の腕。それは、シグナムと同じく闇の書の守護騎士であるシャマルが得意とする旅の鏡を応用したリンカーコアを直接摘出するという荒業だ。しかし、荒業だけに決まってしまえば、まさしく必殺技。どれだけ高い魔力を持っていようとも関係ない。魔力の元たるリンカーコアが摘出されるのだから。

 そして、今、目の前でそのシャマルの必殺技が決まった。

 ―――決まったように見えた。

 本来なら、旅の鏡によって摘出されたリンカーコアがシャマルの手に収められているはずだ。しかし、その手には何も握られておらず、胸から手が出ているはずの女性は、ただただ不敵に笑うだけ。まるで、予想通り、と言わんばかりに。そして、何事もなかったように自らの胸から生えている腕をとる。

 ―――まずいっ!

 そう思ったが、時すでに遅かった。そう、彼女はシグナムたちに触れるだけでいいのだ。ならば、旅の鏡越しとはいえ、その腕は間違いなくシャマルのも。ならば、今、彼女は―――。

 先ほどのザフィーラの時間よりも短い時間で、シグナムの予想が当たってしまう。

 二の腕まで出ていたはずのシャマルの腕が旅の鏡からゆっくりと消えていく。肘、腕、手首、指、とゆっくりと。それだけで、シグナムはシャマルがヴィータやザフィーラと同じような境遇に陥ったことを理解した。理解してしまった。これで、残るヴォルケンリッタ―は自分だけになってしまった。

 おそらく彼女は最後にシグナムを狙うだろう。だが、やすやすとやられない。ザフィーラの言葉を伝えるためにも、志半ばに倒れてしまったヴィータのためにも、偶然か必然か最後の時間を稼いでくれたシャマルのためにも。

 シグナムは覚悟を決め、意志のこもった瞳で目の前の結界を睨みつける。

「翔けよ、隼!」

 西洋剣と鞭状連結刃に続くレヴァンティンの第三の姿。アーチェリーになったレヴァンティンから何者をも貫く必殺の弓矢がシグナムの掛け声とともに放たれる。その弓矢は、高速で結界へ向かって飛んでいき、やがて結界に触れた瞬間、矢はその小さな矢の中に内包した
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