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リリカルってなんですか?
A's編
第三十話 裏 後 (シグナム、アリサ)
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 しかし、それは儚い願いでしかなかった。最初の内は動きを確かめるようにしてザフィーラの猛攻を受けていた女性だったが、やがて飽きたのか、あるいは確認が終わったのか、今まで避けていたザフィーラの拳をパシンと軽く受け止めた。下手すれば、大木さえもへし折ってしまいそうな風切り音を残していたザフィーラの拳を、だ。

 驚愕の表情を浮かべたのはシグナムだけではないのも当然だろう。彼女のような細腕のどこにザフィーラの拳を受けられる力があるというのだろうか。しかし、驚くのはそれだけではなかった。ただ、拳をつかまれた。ただそれだけだ。しかし、それだけなのにザフィーラは一歩も動けない。拳にいくら力を籠めようとも動かない。万力で押さえつけられたように。

 最初は焦りの表情を浮かべていたザフィーラ。だが、やがてその表情は苦悶の表情へと変わる。身体全体から汗が吹き出し、まるで電流を流されているように苦悶の表情とともに苦しそうな声を上げる。なぜ、ザフィーラが声を上げているのかわからない。「やめろ、やめろっ!」とも叫んでいるが、シグナムからは、ザフィーラが何をされているのか全く予想がつかなかった。

 しかし、その内容はすぐにわかることになる。なぜなら、ザフィーラの影がだんだんと薄くなっているからだ。まるで、ここに来た直後に見たヴィータと同じような現象。そのことに気付いた時には、すでに足元からザフィーラの姿はゆっくりと消えていこうとしていた。その段階になれば、叫んでいたはずの声はなくなり、苦悶の表情を浮かべていた顔は人形のように無表情となり、強い意志が籠っていた瞳も虚ろなものへと変化していた。

 やがて、ザフィーラはシグナムの前から完全に姿を消した。

 ―――すまん、ザフィーラ。

 心の中で哀悼の意を送る。

 もしも、自分がもっと強ければ、将としての強さを持っていれば、ザフィーラを犠牲にすることはなかったかもしれない。だが、後悔するのは後だ。今は、ザフィーラが稼いでくれたこの時間を一時も無駄にすることはできない。できないのだが、シグナムは、自分に女性の視線が向けられた瞬間にあまり時間がないことを悟った。

 しかも、今は魔力の補填を行っただけだ。今からシュツルムファルケンを使うためには、レヴァンティンの変形が必要だ。しかし、そのような時間を彼女が与えてくれるはずもない。しかも、ヴィータやザフィーラの状況を見るに、どうやっているかはわからないが、彼女はシグナムたちに触れるだけで、存在を消去することができるらしい。つまり、彼女に触れられたら終わりというわけだ。

「くっ」

 シグナムは下唇をかむ。時間がわずかに足りない。変形している間に触れられたらアウトなのだ。予想が正しければ、変形が終わる前に彼女に触れられてしまう。そうしてしまえば
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