A's編
第三十話 裏 後 (シグナム、アリサ)
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れがたとえ仲間を失った悲しみと怒りから来るものであったとしても、冷静であったとしても、選択が変わらなかったのはシグナムにとって幸運なのか、あるいは不運なのか。
少なくともその一撃は、シグナムが生涯と言えるかわからないが、それでも最大の一撃だったといえるだろう。上空から魔力を全力で振り絞り、レヴァンティンの能力によって炎に変換されたシグナムの姿はまるで、フェニックスのようだった。その火力と威力を鑑みれば、神獣と謳われてもおかしくはなかっただろう。
だが、そんなシグナムの上空からの渾身の一撃を女性は無作為に掲げた片手で張ったプロテクションのみで簡単に受け止めた。
「なっ!?」
絶句するシグナム。決めることしか考えていなかったシグナムの魔力は女性によって受け止められた時点で霧散している。
バカな、とシグナムは思う。少なくとも、魔力としてはシグナムが出せる最高の出力、一撃もシグナムの最高の輝きを見せたというのに女性はたった腕一本で受け止めてしまった。これが、もしもシグナムと同等かあるいはある程度の力量をもってして受け止められたなら驚きはしない。しかし、シグナムの剣が受け止められたのは、単なる力技。シグナムの最大の魔力さえも軽く受け止め、霧散してしまうほどの魔力による防御だった。
確かに完璧に不意をついたものではない。しかし、意識がシグナムに向いていなかったことも事実である。その状態から、片手だけでシグナムの最高の一撃を受け止めていた。目の前の状況が信じられないシグナムは、己が攻撃を仕掛けたことも忘れて呆然としてしまう。そんな余裕はないというのに。
呆然としているシグナムが、次に正気に戻ったのは、女性が片手でレヴァンティンを抑えながらもう片方の腕を伸ばしてきたことを確認してからだ。ただゆっくりとシグナムに向かって伸びてくる掌。しかし、その何気ない仕草にも関わらずなぜかシグナムには背筋が凍るような恐怖を感じた。感じてしまった。それは長年の経験からの勘なのかわからない。しかし、その手に触れてはいけないと思ったのだ。
逃げなければ、と思った。しかし、まるで身体は金縛りにあったように動かない。動けない。まるで蛇ににらまれた蛙のように。このまままでは、腕をつかまれる、とある種の覚悟をした瞬間、突然、女性の身体が銀色の鎖によって縛られる。その鎖は魔力によって編まれた鎖。そして、その魔力をシグナムは知っていた。
「撤退だ」
力強い男性の声が背後から聞こえる。確認するまでもない。同じ闇の書の守護騎士であるザフィーラの声である。
その声によって目が覚めたのか、あるいは伸ばしている手が未だに鎖によって拘束されていることへの安心感なのか、このときになってようやくシグナムの身体は動くようになっていた。同時に恐
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