A's編
第三十話 裏 後 (シグナム、アリサ)
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よって炎を纏った剣は、公園に張られた結界を一撃で切り裂いた。完全に結界が壊れたわけではない。結界の中に入れるほどの切り込みを入れたという形だろうか。おそらく、このまま突入しなければすぐに修復されてしまうだろう。
それでは壊した意味がない。シグナムは隣に立っているザフィーラに行くぞ、と目配せして結界の中に侵入する。ヴォルケンリッターにはシャマルもいるが、彼女は結界の外で待機だ。シャマルには外で待機してもらい、ヴィータを回収したのちにすぐにでも転送してもらう必要がある。この魔力から感じるにヴィータと敵対している相手に真正面から勝負を挑んで、勝つのは不可能だ。つまり、からめ手でしかない。たとえば、シャマルの持っている旅の鏡のような魔法だ。リンカーコアを抜き取るという荒業だが、これならば魔力ランクは関係なくなる。もっとも、問題として相手を捕捉しなければならないという欠点があるのだが、これはある程度時間が稼げれば問題はない。それに、この魔力を手に入れることができれば、闇の書などすぐに完成するだろう。このような強大な敵を相手にあわよくば、という思いは禁物だとは分かっているが、それでも彼女たちの状況を考えれば求められずにはいられない。そんな状況だった。
シグナムとザフィーラが結界の中に突入して目撃したのはぼろぼろになったヴィータの姿とその彼女に近づいてデバイスと思われる杖を近づけた女性の姿だった。それだけならば、彼女にヴィータが敗れたと判断すべきだろう。しかし、シグナムとザフィーラが、彼女たちから受けた印象がそれだけではなかったのは、おそらくヴィータの目だ。どこか濁ったような、どこを見ているのかわからない。まるで虚空を見るような瞳。いつも、シグナムを映していた天真爛漫な瞳は今のヴィータにはなかった。
ヴィータが何かの攻撃を受けていることは容易に想像できる。しかし、それがわからない。はた目には杖を近づけているだけなのだから。もしも、相手が普通で収まる相手ならばシグナムもヴィータを助けるために飛び込んでいただろう。だが、相手は尋常でない魔力を持つ女性。シグナムが躊躇するのも仕方ないことだった。
不意に、今まで虚ろな瞳を浮かべていたヴィータの顔がシグナムたちがいる方向を向いた。それは偶然だったのか、何らかの要因があったのかわからない。とにかく、ヴィータは、その濁った瞳のまま、いや、一瞬だけ昔のような瞳の光を取り戻したように見え、ヴィータはその小さな口を開く。
シグナムは、読唇術を極めているわけではない。だが、そこから見えたヴィータの唇は簡単に読むことができた。
―――ご、め、ん、な。
言葉にすれば、たった四文字。しかし、その想いに込められたものをシグナムは想像できない。彼女がつむいだ言葉の意味は一体なんだったのか、それを知
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