A's編
第三十話 裏 中 (ヴィータ、レイジングハート)
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闇の書の守護騎士であるヴィータは言いようもない不安に駆られていた。その理由はわかる由もない。なぜなら、それは根拠のないものだからだ。ただ、この彼女の右手に収まっている黒い本―――彼女が守護するべき主が持つ闇の書を持っていると自然と心の底から湧き上がってくるのだ。
ああ、確かに理由を探せば幾つだってその不安の理由を探すことができるだろう。最たる例を挙げれば、彼女が握っている闇の書がヴィータの大好きな主の命を蝕んでいる事実だ。その事実を放置することはできなかった。だから、こうしてヴィータは大好きな主―――八神はやてに守護騎士にはあるまじき嘘をついて、騙して、誓いを違えてまでも魔力の蒐集を行っているのだから。
主のはやての体調は蒐集を始めてから元に戻っていた。相変わらず足は動かないが、それはもともとだ。今、ヴィータが手にしている闇の書が完全に起動すれば、そんな障がいはなくなる。そして、闇の書の蒐集自体は魔法生物と襲ってきた管理局員を返り討ちにしてリンカーコアから蒐集することで順調にそのページを増やしている。時間はかかるかもしれないが、それでもできるだけはやてとの約束を違わずに闇の書の蒐集ができる最善手だろう。
そう、事の状況を考えれば順調なのだ。順調すぎるほどに。だが、それでもヴィータの胸の内の不安は消えることはない。むしろ、逆に胸の底から込みあがってくる不安は強くなっていく。それは順調すぎるが故の不安なのか、あるいは別の理由があるのか、ヴィータにはわからない。
わからないからこそ行動する。事を達成した暁には、この不安が解消されることを願って。
胸の底からこみあげてくる不安に蓋をしながら、今、ヴィータは闇の書を集めるために海鳴街の上空で気配を探っていた。探っている気配は、最近、ヴィータが感じている魔力の気配だ。その気配は毎日感じられるのだが、隠れているのか居場所が曖昧だった。その魔力の正体を探っている時間があるなら、ほかの次元世界で魔法生物を狩ったほうが効率がいいはずだった。
その感じられている魔力が魔力ランクSクラスのヴィータとほぼ同等か、それ以上でなければ。
もしも、見つけ出して魔力を蒐集できたなら、闇の書のページを一気に埋めることも可能だろう。
その相手を探し始めて早一週間。相手も魔力を隠すことに長けているのか少しずつ範囲を絞っていくしかない。しかし、今日までにほとんど範囲を絞ることができた。そこを重点的に探せば――――
「見っけ!!」
一週間探し続けた獲物をようやく捕らえることができた。曖昧だった反応もいまやヴィータは手に取るようにわかる。一度認識してしまえば、阻害魔法も意味がなかった。
見つけたことに喜ぶことも少しの間だった。見つけるだけでは意味がない。彼、あるいは彼
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