A's編
第三十話 裏 中 (ヴィータ、レイジングハート)
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み、名前を呪いウサギといっただろうか。口が縫われており赤い不気味な目が特徴的なものだ。キモカワイイというものだろうか。とにかくヴィータはそれが気に入ってしまい、それに気づいたはやてが買い与えたものだ。ヴィータがはやてに心を許すきっかけになったものである。
そして、なによりヴィータにとってはやてからプレゼントしてもらった何よりも大切なものである。だから、守りたかった。この身を盾にしたとしても。
ヴィータのその切なる願いは何とかかなえられた。本当に何とかだが。
空から落ちてきた魔法球がヴィータの張った魔法障壁を破ったのは一瞬だった。おそらく、耐えられたのは2、3発だったのではないだろうか。バリンという鏡が割れたような音を残して魔法障壁は割れた。割れてしまった。障壁が割れた後は、ヴィータの身を守るものは、はやてから作ってもらった騎士甲冑のみだ。しかし、それも魔力球の前には紙のような装甲でしかない。
だから、耐えられるとすれば、己の魔力と気力のみだ。魔力をうっすらを張ってせめての抵抗をする。
「………っ!!」
歯を食いしばって耐えるヴィータ。魔力球から与えられるダメージは、人から直接殴られた時のようだ。しかし、それが一秒間に数十発。普通の人間なら耐えられないのだが、ヴィータはそれを気力だけで耐えていた。気を失ってしまえば、すべてを失うことを感覚で理解していたから。
やがて、その暴力的ともいえる雨は止んだ。しかし、ヴィータの傷は深い。意識は朦朧とし、全身のいたるところが痛かった。全身打撲のようなものである。はやてからもらった騎士甲冑もスカートの部分はぼろぼろで、唯一、丸まるような体勢で守っていたため、前面だけが無事だった。それと、ヴィータが一番守りたかったはやてからもらった帽子も。
―――よかった。
全身が痛む中、手の内に無事な帽子があることを確認して、ヴィータは安堵の息を吐いた。危機はいまだに脱していないというというのに。
「……ふぅ〜ん、それがあなたの大切なもの?」
その声はヴィータの頭上から聞こえた。怒りを押し殺したような抑揚のない声。問いかけているというよりも、確認しているような感じの声。その声に対して、ヴィータは敏感に反応した。反応してしまった。大切なものを大人から取られそうになっている子供のように。ぎゅっ、と自分のものだ、と主張するかのように。
その行動は、ヴィータが守るという目的を達成するうえでは逆効果にすぎなかった。
頭上から伸びてくる手。それはヴィータの内側におさめられた帽子を狙っていた。それに気づいて抵抗するヴィータ。だが、全身にダメージを喰らっていたのがまずかった。力が入らない。少なくとも力ずくで奪われようとする力に対抗するだけの力がでなかった。持
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