A's編
第三十話 裏 中 (ヴィータ、レイジングハート)
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の魔法だった。
真に恐ろしいのは、本来この手の魔法は一人で行うものではない。魔導士が10人以上集まって行う儀式魔法に近いものがあるはずだ。それを一人で体現する女性。改めて、ヴィータは自分が手を出したものを悟った。
しかし、それでも、それでもヴィータは前を見た。確かに目の前の女性が持つ魔力は圧倒的だ。逃げられない事も確かだろう。しかし、それでも、ヴィータはあきらめない。なぜなら、ヴィータが諦めてしまうことは、すなわち主の死へとつながるからだ。なんとしても、この場は命からがらでもなんでもいい、逃げ出す。あるいは、あわよくば彼女から魔力を蒐集したい。彼女から魔力を蒐集できれば、闇の書のページなどあっという間に埋まってしまうだろうから。
第一目標は逃げ出すこと。それを念頭に置いて、ヴィータは目の前に広がる圧倒的な魔力に立ち向かうためにグラーフアイゼンを構えた。今から駆け抜ける場所は確かに死地だろう。だが、それでも何も言わずに従ってくれる愛機が頼もしかった。
負けない、という意思を込めて目の前の女性を睨みつける。しかし、彼女はヴィータの牙をむくような表情を視界に入れたとしても、動揺していなかった。むしろ、それが喜ばしいことのように口の端を釣り上げて嗤った。
「ちっくしょっ!」
それが誇りを傷つけられたような、自らの決意を嗤われたような気がして、しかし、心は冷静に目の前の魔力の奔流が発射されるまえに勝負をつけてしまえ、とばかりに先手を狙った。しかし、ヴィータには空を駆ることすら許されなかった。
「なっ!?」
地面を蹴ろうとした瞬間に感じた違和感。何事か? と見てみれば、足首に桃色の光を放つバインドがからみついていた。いつのまにっ!? と驚くが、それどころではない。その一瞬は明らかにヴィータの隙になってしまったのだから。
「ファイア」
静かに、無慈悲に、冷徹に空に浮かんだ魔法球に対して命令が下される。それはある種の死刑宣告と言ってもいいだろう。
―――空が落ちてくる。
無数に降ってくる。落ちてくる魔力球を見たヴィータが抱いた感想だった。半ば無意識的にヴィータは魔法球に対して障壁を張る。ヴィータの持ち味は切り込み隊長ともいえる突貫力と近接戦闘だ。そのためには、魔力球の雨を防御壁を張りながら突き破ることもある。硬い障壁は今まで自分の役割を果たしてきたヴィータの持ち味だ。しかしながら、その自慢の障壁も目の前の魔力球の雨の前には紙のようなものだろう。ヴィータが行ったことは一瞬の時間稼ぎでしかなかった。
その一瞬でヴィータがなしたことは――――頭上の帽子を護るように身体で包み込むことだった。
ヴィータが身を盾にして守ろうとしたのはヴィータが初めてはやてから買ってもらったぬいぐる
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