A's編
第三十話 裏 中 (ヴィータ、レイジングハート)
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はずの少女が突然、振り返り防御魔法を張った。それは、ヴィータからしてみれば、単なる初級魔法に過ぎない。普通の魔導士が張った程度の防御魔法であれば、簡単に貫けたに違いない。しかし、目の前にいる少女は、少なくともヴィータと同程度の魔力を持つ魔導士だ。ヴィータの不意打ちともいえる魔力のこもった鉄球をいともたやすく防いでいた。
そのことに対して驚愕するヴィータだったが、彼女の中に蓄積された長年の経験はヴィータを次の行動へと移らせていた。
すなわち、誘導弾に紛れた近接戦闘へと。
切り込み隊長の名にふさわしい速度で少女に近づいたヴィータは思いっきり鈍器にもなりうるハンマー型のアームドデバイスであるグラーフアイゼンを振りかぶり、吼えた。
「テートリヒ・シュラークっ!!」
先ほどの誘導弾とは比べ物にならないほどの魔力を込めた一撃。先ほどのプロテクション程度であれば、砕けるだろうと思っていた。しかし、現実はヴィータの上を行く。
渾身の力を込めたグラーフアイゼンは、桃色の障壁によって防がれていた。
「なっ!?」
先ほどの誘導弾が受け止められた時のプロテクションを考慮に入れたはずの攻撃を防がれたヴィータは、驚きの声を上げると同時に少女から距離を取るために後ろに後退した。初心者と思っていたが、どうやらその認識を改める必要があるようだ。確かに魔法は初級程度しかない。しかし、その魔法はヴィータの魔法を受け止めるほど。つまり、それほどまでに洗練されているというべきだろうか。
「……テメェ、あたしのテートリヒ・シュラークを受け止めるなんて、何者だ?」
油断せずにグラーフアイゼンを構えて問うヴィータ。だが、相手からの返答はない。ヴィータもそもそも期待していない。相手がベルカの騎士なれば、応えも期待できただろうが、目の前の少女は、一般人に近いといってもいい。先ほどから見える魔法陣もベルカ式の三角形ではなく、ミッドチルダ式の円陣だったのだから。
しかも、少女はこちらに対する警戒というよりも、どこか困惑したような表情が見える。もしも、戦いの経験が豊富であれば、少女は迷うことなどないはずだ。なぜなら、ヴィータは明確な敵なのだから。
圧倒的な魔力と技量。だが、経験は不足。なんともちぐはぐな印象を与える少女だった。
「まあ、テメェの正体なんてどうでもいい。あたしの目的はたった一つだ」
そう、少女の正体なんてどうでもいいのだ。ヴィータがやるべきことはただ一つ。主からの信頼を損ねようとも、やらなければ、やり遂げなければならないこと。そのためになら命を賭すことすら躊躇しない。
「テメェの魔力―――いただくぜっ!!」
それは宣言。これ以上迷わないための宣誓だった。
「シュワルベフリーゲンっ
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