A's編
第三十話 裏 前 (クロノ、なのは)
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かこそばゆい感覚を覚えていた。まるで美容院に行った後のような奇妙な感触だった。
なんだろう? と思って右肩に触れてみれば、返ってきた感触はよく知っている感触だった。お風呂場でいつも触れている感触。母親譲りの栗色の細い髪。それが右肩にかかっていた。確かになのはの髪はセミロングともいうべき髪の長さだ。
だが、リボンで結っているなのはの髪が肩にかかるはずがない。
―――え? あれ? なんで……?
目の前に襲ってきた少女がいるにも関わらず現状が理解できないなのはは混乱の極地に陥ろうとしていた。混乱していて、目の前の少女さえ目に入っていなかったなのはに助け船を出すように答えが目の前に現れた。
それは一本の紐だった。まるで強い衝撃を受けたようにぼろぼろになった一本の紐。それが上空からひらひらと、ひらひらと宙を舞っていた。そして、なのはは、そのひらひらと、ひらひらと舞っている紐に見覚えがあった。
当たり前だ。なぜなら、その対となるべき、ぼろぼろになる前の姿と同じ姿をしたリボンはなのはの左についているのだから。毎夜、外したリボンを宝箱に仕舞うように母親から分けてもらった化粧箱の中に大事にしまっているのだから。それに何より、それは、初めての友達である蔵元翔太からプレゼントされたものなのだから。
そんな大切なものをなのはが忘れるわけがない。
ならば、ならば――――
―――ナンデ、ショウクンノリボンガボロボロナノ?
答えはたった一つしかなかった。先ほどまでリボンは確かになのはの髪を結っていた。外れるとすれば、その原因はたった一つしかなかった。
「あ、あ、あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
もう二度と手に入らない大切なものを一瞬で失った悲しみは、一瞬でなのはの心を支配し、少女の口から悲しみの叫びを魔法結界の中に響き渡らせ、なのはを中心として急速に魔力を爆発させるのだった。
つづく
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