A's編
第三十話 裏 前 (クロノ、なのは)
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はの戦闘経験の不足が災いしていた。今までの敵は大体、魔法を正面から打ち合うような相手が多かった。あるいは圧倒的な力でねじ伏せるような状況だ。だが、相手は意思のある人間で、なのはがたたき伏せようとも思っていない相手だ。それに、魔力の量からいえば、なのはよりも少ない。経験からいえば容易に相手できるはずだった。圧倒的な力でねじ伏せられるはずだった。
それはある種の油断と言ってもよかったのかもしれない。
だから、なのはは気付くのが遅れた。近くの茂みから飛び出してきて、赤い魔力をまとったまま地面すれすれを走る赤い少女の姿に。
最初に気付いたのは、なのはが持つ愛機―――レイジングハートだった。
―――Master!
レイジングハートの珍しくせっぱつまったような警告。レイジングハートからの警告に反応して、今まで隠していた魔力を全開にして高速で近づいてくる物体―――いや、赤い少女というべきだろう。だが、振り返りながらもなのはは、彼女に対する反応がもうワンテンポ遅れた。彼女がぎりぎりまで地面すれすれを飛んでいたからだ。
ここでもなのはの戦闘経験の希薄さが現れた。もしも、なのはが少しでも彼女の実家の剣術を齧っていたなら、すぐに反応できただろう。確かにレイジングハートの模擬戦闘を経験しているが、それでもしょせん機械が作った模擬だ。赤い少女が持つ数百、数千という戦闘の上に積み重ねられた戦闘経験は、なのはとレイジングハートごときの希薄な戦闘経験を軽く凌駕していた。
なのはが地面から襲いかかってくる赤い少女に気付いて、バリアジャケットを緊急展開する。なのはの服が桃色の魔力光に包まれて、一瞬で聖祥大付属小の制服を意識したバリアジャケットに変化する。このとき、なのはの髪を結っているリボンは変化しない。通常は、バリアジャケット同様に変化するものだが、同じようなものを模したものをつける気にはならなかったのだ。
なのはが振り返りながらバリアジャケットを緊急展開するのと地面すれすれを飛んできた赤い少女が先ほどとは逆に振り上げるようにハンマーを使って攻撃してきたのはほぼ同時だった。
振り返りながら、少女からの防御を避けるために地面を蹴っていたなのは。後一瞬でも遅れていれば、赤い少女からの攻撃はなのはを捕えていただろう。もっとも、バリアジャケットを展開した以上、大けがになったとは考えられないが。
赤い少女は、攻撃が届かなかったことを悔いているのだろう。ちっ、と少女の姿に似つかわしくなく舌打ちをしていた。なのはからしてみれば好機だ。今まで隠れていた少女を真正面からとらえることができたのだから。一瞬だけにらみ合う二人の少女。だが、赤い少女を視界に入れながらもなのははある場所に違和感を覚えた。
それはなのはの右肩だ。どこ
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