A's編
第三十話 裏 前 (クロノ、なのは)
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なければ。
そう考えて、武装隊をまとめてアースラへと帰還しようとするクロノに声をかけてくる者がいた。
「大丈夫だよ」
振り返れば、そこに立っていたのは、竜をまとめて九匹落とすような大魔術を使ったのに平然としている高町なのはが笑っていた。
クロノはなのはの言葉に混乱する。いったい、何が大丈夫なのだろうか。現実に、たった今、八神家は襲撃されているというのに。だが、高町なのははクロノの心配をよそにどこか確信を持ったように笑い、嗤い、哂い、もう一度だけ繰り返した。
「うん、ショウ君は絶対大丈夫だから」
どこか確信を持った、どこか満足感を覚えるようななのはの笑みにクロノ・ハラオウンは言いようのない戦慄をなぜか覚えるのだった。
◇ ◇ ◇
高町なのはは、緊急事態に驚き、慌てるクロノたちをしり目に一人だけ落ち着いていた。落ち着いている理由は至極単純だ。
クロノにとって緊急事態であっても高町なのはにとっては緊急事態でもなんでもないからだ。そのための彼らだ。万が一にも備えている。事実、彼らからの反応を探ってもなんら危機感を抱くような状況ではなかった。万が一の手段をとるほどでもないの状況。つまり、なのはにとっては、日常に分類される程度の出来事なのだ。
それどころか笑みが浮かんでくる。クロノが慌てているということは翔太にとっては危機的状況なのだろう。だが、その状況を救っているのはなのはの力だ。なのはが翔太を助けている。救っている。その事実だけでなのはの心は踊る。
もっとも、なのはといえども『彼ら』がいなければクロノと同様に慌てふためいただろうが。
なのはは思い出す。彼らと出会った―――もっとも後悔すべきあの日を。
その日は、夏から秋にかけて変化しようとしているような日だった。夏ほど日が長いわけではなく、また夏のように暑いわけではなく、日が落ちれば肌寒いと感じることもあるような日だ。もしも、四季を感じることを雅だと思っている人であれば、季節の変わり目を感じられる絶好の日ともいえた。
もっとも、季節などあまり気にしたことがないなのはにとっては単なる日常でしかなったが。そう日常だ。だから、なのはは日が暮れようとしている人気のない公園でお気に入りの翔太からもらったリボンをつけて結界を張った状態で魔法の訓練をしていた。
夏のあの魔法世界で、翔太がテロリストに襲われてから、なのはの魔法の訓練にはより一層の力がはいるようになった。自分が近くにいながら翔太を傷つけてしまった事実が許せないからだ。もっと自分に魔法をうまく扱える力があれば、翔太は傷つかなかったのではないか。自分はあんなに絶望を味わうことはなかったのではないだろうか。その疑念が、なのはをより厳しい訓
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