A's編
第三十話 裏 前 (クロノ、なのは)
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ロノの耳に入った。ロスト・ワールドの支配者である竜を武装隊の面々が連れてきたのだ。その数九匹。一匹あたりの大きさが人の五倍はあることを考えれば、竜にちょっかいをかけて連れてきている武装局員たちは生きた心地がしないだろう。だからこそ、三人一組で行動させているのだが。
彼らはほぼ同時にクロノたちがいる地点―――つまり、なのはへ向けて竜をうまく誘導していた。この行動もずいぶん手慣れたものだ。それだけ繰り返しているともいえる。
「―――レイジングハート」
『All right My master』
一匹の竜が彼女の射程距離圏内に侵入したのだろう。今まで静かに佇んでいたなのはは、静かに相棒の名前を呼ぶと杖を正面に構えた。同時になのはから解放された魔力の奔流が渦となって彼女の周囲を巻き上げ、風が逆巻き、先日まで結っていたはずのストレートの髪を静かに揺らす。しかし、これはポーズに過ぎない。レイジングハートと呼ばれた杖の宝石が彼女の得意とする射撃魔法の発射口だったのは、過去の話だ。彼女の砲撃魔法の発射口は、彼女の周囲に展開されていた。
アクセルシュータのような魔力球。その周りを環状魔法陣が取り巻いている。その一つ一つがクロノ一人では太刀打ちできないほどの魔力が込められていることがわかる。それが九つ。それが今の高町なのはの発射台だった。
「目標補足(ターゲット・ロックオン)」
桃色の魔力球が輝きを増し、周りを取り巻く環状魔法陣が高速で回転する。なのはから供給される魔力に反応しているのだ。武装局員というエサにつられた竜たちのうち勘のいい竜もいたのだろう。なのはの魔力に反応してすぐさまその巨体を反転させて逃げ出そうとする。だが、しかし、竜たちが踏み入れたのは、ひとたび立ち入れば逃げることができない死地だ。気付いたところですでに遅い。彼らはすでに捕捉されているのだから。
「ディバインバスター・ナインライブス」
静かに口にされるトリガーワード。彼女がそれを口にすると同時に彼女の周りの九つの魔力球は特大の輝きを放ち、同時に彼女自身の胴体ぐらいはありそうな太さの桃色の砲撃を発射する。それは、既に捕捉していた竜たちに向かって真っすぐ突き進む。このときになってようやく逃げようとした竜もいたが、その行動は遅すぎる。なのはの方から反転する前に桃色の砲撃に貫かれ、その巨体を地面の密林の中へと沈めた。ドスン、ドスンと落ちていく竜たち。その数五匹。魔力への抵抗を持っているはずの竜の鱗さえ、なのはの砲撃の前には紙にも等しいようだった。
残りは四匹。勘のいい竜たちが逃げ出したようだが。しょせん、それも無駄なあがきでしかない。彼女の絶対領域から逃げ出すためには踏み込む前に逃げ出すしかないのだが、彼女の領域の広さはそこら
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