暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルってなんですか?
A's編
第三十話
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 クロノさんから護衛の仕事を頼まれた次の日の月曜日。僕はやや憂鬱な気分を背負いながら登校していた。理由は言うまでもないだろう。昨夜のアリシアちゃんとアリサちゃんのことである。アリシアちゃんにはあの後、質問攻めにあってしまった。たしかに、何も話さなかった僕が悪いわけだが。

 幸いなことにアリシアちゃんは、最終的には僕が護衛の仕事でしばらくの間留守にすることに納得してくれた。その代償は決して安いものではなかったが。内容は、僕がおそらく仕事を行うであろう1か月と同じだけの期間をアリシアちゃんを優先する券だった。つまり、30枚の『蔵元翔太フリー券』を渡すようなものだろうか。広告の裏に30分割したものに手書きで『蔵元翔太フリー券』と書くのはなかなかの仕事量だった。

 さて、問題はそれよりもアリサちゃんだ。昨日の電話の様子から察するに遊園地のことを非常に楽しみにしてくれていたと考えてもいいだろう。それを僕の都合が悪いとはいえ、断ってしまったのだ。もちろん、僕だって引けないことである。もう少し早ければ、僕だって対処できていたのだが、少し間が悪かった、としかいえない。

 しかし、ここで、時間調整はできないだろう。クロノさんの部隊の調整だって終わっているはずだ。それなのに、僕一人のわがままのせいでその調整を変えてくれとは言えない。それに、はやてちゃんを一人で残すのも問題だ。いくらなんでも、はやてちゃんが大変な時に僕だけが『遊園地に遊びに行ってきます』とはいえない。もしかしたら、はやてちゃんは笑顔で見送ってくれるかもしれないが、空気を読めと言われることは間違いないだろう。

 解決する方法があるとすれば、はやてちゃんも一緒に行くぐらいだろうか。遊園地も今は障がい者だって遊べるように工夫している。つい最近オープンした遊園地がバリアフリーになっていないとは到底思えない。しかし、この方法も行き先が普通の遊園地ならば一考の余地はあっただろうが、行き先が『海鳴アミューズメントパーク』では無理だろう。あれは、アリサちゃんのお父さんが株主だったからこそ手に入れられたものだ。今から一人追加なんて都合のいいことができるわけがない。

 つまり、僕はアリサちゃんに対してもアリシアちゃんのように納得してもらうしかないのだ。

 ―――はぁ、『フリー券』程度で納得してくれるかな?

 電話の最後の怒鳴り声が忘れられない。今まで似たように僕が用事で行けなかったことはあったが、あそこまで一方的に切られたのは初めてだ。昨日、電話することも考えたが、アリサちゃんが怒っているときに何を言っても怒らせるだけだ、と思って今日にしたのだが。それが裏目に出る可能性も否定できない。

 『怒り』という感情は、実はとてもエネルギーがいる感情なのだ。だから、一晩寝れば少しは和らいでいるこ
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