A's編
第三十話
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ゃんが家族と呼び、シグナムさんが守護騎士と呼ぶヴィータという少女だった。
「お〜い、シグナムっ! いつまでいるんだよっ! 人が来るぞっ!」
「……わかった」
泣いている少女を置いていくことは気が引けるのだろう。若干、名残惜しそうにしながら、それでも振り返ることなくシグナムさんは仲間の元へと向かう。彼らの足元に展開されているライトグリーンの魔法陣は転送魔法だろうか。このままでは、彼らは転送して消えてしまう。魔法が使えないはずのはやてちゃんだったが、そのことは直感で悟ったのだろう。涙声のままで、動けないはずの椅子の上で必死に身を乗り出して、彼女たちをつかむように片手を伸ばして声を張り上げて叫んだ。
「シグナムっ!! ヴィータっ!! シャマルっ!! ザフィーラっ!! 待って!!!」
だが、必死の少女の叫びもむなしく、彼らは一切の躊躇することなく、振り返ることさえなく緑色の魔力光に包まれ、その場からいともたやすくあっさりと退場した。
しばらく、呆然と言った様子で彼らが消えた空間を見つめるはやてちゃん。やがて、ようやく彼らが消えたことを受け入れたのだろう。くしゃくしゃに涙でぬれた表情をさらに絶望を強くして、現実のすべてを否定するように叫んだ。
「う、嘘やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
心が深く傷ついた少女の叫びが寒い冬の夜に響き渡るのだった。
◇ ◇ ◇
闖入者が現れた夜。僕とはやてちゃんは相変わらず同じベットに入っていた。ただし、僕ははやてちゃんに背を向けてだが。いつもなら向き合って夜のお喋りに興じるところなのだが、今日ははやてちゃんの要望で背を向けていた。泣き顔を見られたくないらしい。
闖入者の後処理は、彼らが消えた後に駆けつけていたクロノさんがやってくれた。襲撃者たちは全員クロノさんが引き取った。彼らの顔を見た時に驚いたような表情をしていたがいったいどうしたのだろうか? 僕への聴取は後日として、今日はゆっくりと休んでくれと言われた。もちろん、危険な目に合わせたこともしっかりと謝ってくれたが。
幸いにしてはやてちゃんの家に被害はなかった。結界の内部だったからだろう。
クロノさんが処理を行った後は、いつもの日常だ。もう一度お風呂に入って―――特にはやてちゃんは泣き顔でひどいことになっていた―――、ひどく動揺しているはずのはやてちゃんのためにホットミルクを作ったりして、今はこうしてベットに入っているわけである。
いつも、大体僕のそばから離れがらないはやてちゃんだったが、今日は特にひどかった。体の一部がふれていないと不安なのだろう。僕が少しでも離れようとすると不安そうな、泣きそうな顔になる。僕が放っておけるわけもなかった。おかげでいつもなら隣り合って
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