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リリカルってなんですか?
A's編
第二十九話 裏 (夏希、エイミィ、アリサ)
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 瀧澤夏希にとって蔵元翔太とは、出会った当初は自分から親友の雨宮桃花を奪う敵だった。

 夏希が桃花と出会ったのは、家が近所であり母親同士の仲も良好だったため、自然と遊ぶ友人になったに過ぎない。だが、桃花は生来からの性格のだろうか、どこかおっとりしたところがあり、放っておけないような雰囲気を持っていた。それを子供心ながらに夏希は感じ取ったのだろう。いつの間にか、夏希は『桃花は自分がいないとだめだ』と思うようになっていた。つまり、夏希は、ダメな男の世話を焼きたがるタイプだったようだ。

 現に保育園に入ってからは、おっとりしたところを攻めてくる男子たちに対して大立ち回りをしたものだ。

 そのころの翔太に対する夏希の印象はあまりないと言ってもいい。なぜなら、二人には接点がなかったからだ。確かに翔太は同年代にも関わらず、よく関心を持って保育士たちに交じって彼らの世話をしていたようだったが、桃花には夏希がいたため迷惑をかけるような接点が見つからなかったというべきだろう。

 夏希と桃花たちが翔太と接点を持つようになったのは、ある休日のお昼時になる。いつも遊んでいる何の変哲もない公園。そこで砂場やら滑り台などの遊具などで遊んでいた。しかも、タイミングが都合よく重なったのかほかに誰もいない独占状態だった。珍しいな、と思いながらも好き勝手、自由に遊べることを嬉しく思いながら彼女たちは遊んでいた。

 そこに招かれざる客が来るまでは。

 招かれざる客は、野良だったのだろう。薄汚れた容姿をしていた。体躯は中型犬と同じぐらいで大きいとも小さいともいえないタイプの犬だった。だが、それは大人やもう少し大きい年齢からしてみれば、だ。彼女たちはまだ小学校に上がる前の少女である。大人から見たよりもその犬が大きく見えた。

 だからだろう。彼女たちが近づいてくる犬を見て、思わず逃げ出してしまったのは。端的にいえば怖かったのだ。追いかけまわしてくるわけではない。ただ、そこに自分と同じぐらいの犬が存在することが。だが、この場合、その行為は裏目に出てしまう。

 それは、犬としての本能だったのだろう。夏希と桃花が逃げ出したと同時に迷い込んできた犬は彼女たちを追いかけた。だが、彼女たちに犬の本能などわかるはずもなく、ただでさえ煽られていた恐怖心がさらに増大していた。

 逃げる夏希と桃花。追いかける犬。

 もしも、大人がいれば、周りに子どもがいれば。彼女たちを助けに入っただろう。だが、どういう天の采配か、この公園には彼女たち以外は誰もいなかった。

 ――――つい、先ほどまでは。

「こっちっ!」

 助け船を出したのは、夏希も知っている少年だった。

 この後からだ。彼女たちと―――より正確には桃花と翔太の付き合いが始まっ
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