A's編
第二十九話 裏 (夏希、エイミィ、アリサ)
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アリサだった。
そして、気付けば、あと一か月もすればクリスマスという時期になってしまった。去年は、あんなに楽しかったのに、三年生になってから何かいろいろと歯車がずれてきているような気がする。だから、そのずれを直すために誘った遊園地だったのに。前のように仲良く、遊べるような仲に戻ろうとアリサにとっては一大決心をしたのに、翔太はあっさりとそれを袖にした。
「翔太のバカ……」
そうは強がってつぶやいてみるものの、心の中を占めるのは不安だけだ。
確かにアリサは気が強い。だが、翔太にあそこまで一方的に怒鳴ってしまったのは初めてだ。なぜなら、翔太がいつも一歩引いていたからだ。アリサに気を使っていたからだ。だからこそ、アリサがそこまで怒鳴ることは今までなかった。
そうであるからこそ、アリサには翔太の反応が読めなかった。もしかしたら、自分が怒鳴ったことでアリサに嫌われたと思っているのかもしれない。もしかしたら、アリサのことなんて知らない、と怒っているのかもしれない。翔太が怒っているところを想像できないアリサだったが、翔太が怒るという可能性を否定できなかった。
ならば、電話をかけなおして、謝るべきだと思うだろう。それは正論だ。早いほうが傷は浅い。だが、小学生であるアリサはそれに気づかない。翔太がもしも、自分にあきれていたら、怒っていたら、そう考えるとディスプレイ上には蔵元翔太という名前が浮かんでいたとしても通話ボタンを押すためのあと少しの勇気が足りない。強気だが、脆く、弱い少女には、十分な勇気がなかった。
プルプルと指が震える。もしかたら、さっさとこのボタンを押して、電話をして謝ればいいのかもしれない。でも、もしも……もしも、「僕も、アリサちゃんなんて知らないよ」なんて言われたら。それは、アリサのたった二人しかいない親友の一人を失うことと同義だ。もちろん、翔太はアリサを無視したりはしないだろう。だが、前のように仲良くなりたいというアリサの願いは永遠に叶わなくなるだろう。
―――ど、どうしよう。
あの発言を後悔しているアリサだったが、言ってしまった言葉は取り消すことはできない。
どうしよう、どうしよう、と頭を悩ませるアリサの目に携帯電話に登録された家族と翔太以外のもう一つの名前を見つける。
『月村すずか』
アリサのもう一人の親友だった。
「そうだっ! すずかなら」
アリサよりもおとなしい少女。強気な自分とどうして気が合うのかわからないが、それでも二人は親友だった。アリサの中でこんな話ができるのは、翔太を除けばすずかしかいなかった。
急いですずかの番号を選んで、通話のボタンを押す。2、3回後のコール音のあと、がちゃっ、という電話に出る音が聞こえた。
『どうした
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