A's編
第二十九話 裏 (夏希、エイミィ、アリサ)
[9/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
アリサ・バニングスは、すでに切ってしまった携帯電話を片手にどうしよう、どうしよう、と未だかつてないほどの不安に襲われていた。電話の相手は、アリサが親友と思っている蔵元翔太だった。だが、アリサが一大決心をして誘った遊園地への誘いを断ってきたので、思わず堪忍袋の緒が切れて『もういいわよっ!』という言葉とともに切ってしまったのだ。
アリサにとって、今回の遊園地は、最近、縁遠い翔太と前のように仲良くするためのきっかけにする予定だった。
夏休みに居場所も告げずに二週間もどこかへ旅行へ行き、夏休みが終わったかと思えば、今度は運動会で目を見張る活躍をし、そのおかげでアリサたちと過ごす時間が少なくなってしまった。正確に言えば、分母が増えたため、アリサたちと遊ぶ時間が減ってしまったということろだろうか。
確かに塾などは翔太と同じクラスだ。ほかのクラスメイト達はいくら第一クラスとはいえ、聖祥大付属小と同じ学力順になっている塾のクラスで、アリサたちと一緒のクラスになれるほどの学力を持っていない。しかし、塾は遊ぶところではない。勉強するところだ。翔太もそれを重々承知しているのか授業中にお喋りなどせずに勉強している。必然的に翔太と話せる時間は行きと帰りの短い時間になってしまう。
ちょっと前は、それに週に一回は必ず昼ごはんの時間に一緒に食べていたが、最近は、アリサの天敵ともいえる夏希のせいだ。最近は、あいつが翔太と一緒にご飯を食べる相手を決めている。翔太も翔太で、断ればいいのにほいほい従うのだから腹立たしい。
しかも、休日の英会話教室だって、運動会で活躍したのがまずかったのか緑川FCというサッカーのチームに誘われてしまい、そちらに顔を出すことが多くなってしまった。アリサは当然、断ればいいじゃないっ! というのだが、翔太は申し訳なさそうな顔をして、アリサに謝るのだ。
そう言われては、アリサも強くは言えない。そもそも、翔太の行動を決めるのは翔太であり、アリサではない。もし、無理を言って、わがままを言って翔太に嫌われたら……そんなことを考えてしまうと胸が張り裂けそうな不安に襲われ、それ以上強くは言えない。
せいぜい、今度の休みはあたしと遊びなさいよっ! と捨て台詞のように言うしかなかった。
しかし、その約束もサッカーの試合のせいで反故にされてしまうのだが。一応、約束を覚えていたのか、サッカーの試合には誘われたものの父親とは異なり、サッカーのルールをろくに知らないアリサからしてみれば、退屈なことこの上なかったが。もしも、翔太がもっとゴール前へ行くようなポジションだったら話は別だろうが、ゴール前はゴール前でも自分のゴール前なのだから仕方ない。マネージャーさんは、翔太をほめていたが、何がすごいのか全く理解できなかった
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ