A's編
第二十九話 裏 (夏希、エイミィ、アリサ)
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ユーノがいなければ作業がさらに遅れてしまうと判断したクロノが通信を切ろうとした直前にユーノがもったいつけるように通信を切るクロノの手を止めさせた。
『グレアム提督の資料に意図的かわかりませんが、抜かれた部分があります』
「それは――っ!!」
クロノは期待したようにユーノに先を促す。もしかしたら、逆転の一手になるかもしれないからだ。
『闇の書が暴走する直前に姿を現す女性の姿です』
「……守護騎士とは違うのか?」
闇の書には守護騎士が存在する。闇の書と主を外敵から守るAランクを誇る騎士だ。その強さは、経験もあいまってか強いと一言でいえるほどだ。彼らとは例外的に存在する女性がいるとは確かにクロノも聞いたことはない。
『違うと思います。守護騎士が現れるのは覚醒の第一段階です。だが、彼女が現れるのは必ず闇の書が完成し、暴走する直前です。そして、もう一つ奇妙な事件の記録があります。完成した直後に主の姿がその女性に変わったというものです』
「それが意味するところは?」
もしかしたら、それは何かを変えられる一手ではないかとクロノは期待してユーノに答えを求める。もっと、理論的であれば、クロノも答えを導き出せたかもしれないが、資料も手もとにない以上、それ以上は無理だった。だからこそ、ユーノに答えを求めていた。
『―――おそらく、闇の書はユニゾンデバイスです』
「ばかなっ!」
「うそっ!?」
クロノとエイミィが同時に驚きの声を上げた。それほどの衝撃なのだ。ユニゾンデイバスというのは。ユニゾンデイバスは失われた技術だ。存在は知られているが、その技術は失われて久しい。はるか昔の大戦では使われたとは聞くが、ロストロギアとして残っていない以上、見ることができない技術だろう。
「……なるほど、それが事実とすれば……」
衝撃の推測を聞いた直後は驚いたが、クロノはすぐに思考を取り戻し、今までの調査結果などから可能性の糸を手繰り寄せる。ぶつぶつつぶやいているのは考えをまとめるためだろう。そして、すぐに考えがまとまったのか、ユーノが映るスクリーンに向かって顔を上げる。
「わかった。君はその確証が得られるような資料と引き続き資料の捜索を行ってくれ」
『承知しました』
それでは、また明日、と言ってユーノは通信を切る。
しばらくは、今受けた衝撃から立ち直ることができなかった。しかし、やがてゆっくりとクロノはエイミィのほうを向く。
「―――わずかだが光明が見えてきたぞ」
先ほどまでの苛立ちはどこへやら、うれしそうに笑うクロノを見て、エイミィは、できれば無事に解決策が見つかって、円満に事件が解決しますようにを祈るしかなかった。
◇ ◇ ◇
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