A's編
第二十九話 裏 (夏希、エイミィ、アリサ)
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様子はただ単に苛立っているようにしか見えない。正確に言えば、仕事に八つ当たりしているといっていいだろうか。
なぜ? と聞くまでもない。クロノが今の作戦に納得していないのは知っている。それにも関わらず彼は、執務官という立場で作戦を進めなければならない立場にいる。それだけならば、ここまで彼が苛立つことはなかっただろう。彼を苛立たせているのはもっと別の要素だ。
作戦を進めるうえで二人の民間協力者を雇うことにした。先の事件に関係していた高町なのはと蔵元翔太だ。なのはは戦力として、翔太は作戦の目標でもある八神はやてとの橋渡し役として雇っていた。彼らには、当然作戦の目的も話している。
―――最後の一線を除いては。
つまり、最終目標である八神はやての時空牢への凍結処置のことである。もっとも、教えればあの翔太のことである。反対するのは目に見えている。それが友人ならなおのことだ。だからこそ、伏せている。それに知っていて、彼を納得させたとすれば、翔太はこの作戦に加担したという罪悪感を持ってしまうことになる。
時空管理局の都合で巻き込むのにその処遇は考えられない。だからこそ、内緒にするのだ。『僕は知らなかった』『彼らが勝手にやったことだ』と時空管理局に矛先を向けさせるために。もしかしたら、彼は時空管理局を憎むかもしれない。しかし、それは覚悟のうちだ。自分を責めるよりもましだろうと考えている。
最高の結末は、クロノが水面下で動いている計画が実を結ぶことであるが。
これに関しても、必要以上に人員をつぎ込むことはできない。クロノが時空管理局の評議会で可決された作戦に不満を持って、それを壊そうとしているということを知られてはまずいからだ。最悪の場合、この事例から外される可能性もある。そうなってしまえば、この事案に関してクロノが手を出すことはできなくなってしまう。それだけは避けたいところだ。だからこそ、現地の民間協力者であるなのはや翔太には黙っている。
現在、クロノが動いていることを知っているのは、クロノ、エイミィ、リンディ、そして―――
『クロノ執務官、お時間よろしいでしょうか?』
エイミィとクロノしかいない部屋に第三者の声が響く。彼が、残りの一人であるクロノの個人的な協力者―――ユーノ・スクライアだった。
「ああ、大丈夫だ。定時連絡だろう?」
そりゃ、あれだけのスピードで仕事をこなせば、終わるだろうね、とエイミィは思いながら無言で椅子をユーノが映っている画面に視線を動かす。ユーノが映る画面は、どこか違和感を覚える光景だ。どこに? と言われれば、答えは簡単だ。空中に本が浮かんでいるところだろう。
もっとも、彼がいる場所を考えれば不思議な光景ではない。ユーノがいる場所は無限書庫。時空管理局の
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